満月

朝4時から5時まで
西の空の山の端へと
拡大されながら沈む2月の最後の満月を見ながら
リヒテルの平均律を聞いた。
10歳の時の蚊帳の中で目覚める朝を思い出した。
そして、朝露の立ちこめる川で
ウナギを釣っていたまだ暗い朝を思い出す。
アメリカのオハイの山で瞑想したときも
突然その映像を思い出した。
遠い山から
遠い声が聞こえる。
まだ訪れていないだれかの裏庭の獣にも
この満月は輝いている。