月別アーカイブ: 2015年6月

別な方法(precession)

自分が既に知っていることを正当化するための知識は
それを正当化する代わりに別の方法で思考する知識よりも豊富だ。
別な方法とは、すでに知識ではなく
思考自体を批判する作業過程に属しているからだ。
幾何学的思考自体への批判作業でないとすれば、
シナジェティクスとは一体何なのか。
テンセグリティもジオデシックスも
批判する作業過程が引き起こす
別な方法(プリセッション)の発見から生まれている。
プリセッションとは偶然の副作用ではない、
予測不可能な、しかし、確実性からやってくるシナジェティクスは
数学的証明よりも概念モデルの発見の探究から始まる。

構造と過程

構造を定義するということは、
その現実的な破壊、あるいは非破壊実験、
その効果的な構築方法、
そして、
これまで存在しなかった変換作用の発見、
あるいは統合作用などの理論形成、
これらの過程を経験することを意味している。
概念モデルから原寸大モデルまでの
テンセグリティシェルターの定義は
過去には存在しない。

非軽量化のテンセグリティ

テンセグリティを個人的な芸術作品にするための
芸術表現の正当化は、モービールに影響された
彼の初期の彫刻作品から後の
軽量化を排除した非工学的な歴史である。
たとえ、現代美術の美の諸基準に従っていたにせよ。
彼はインタビューで
テンセグリティは人間の住居にはもっとも<危険な構造>と
考えていたことを告白している。
一本の張力材の破断が構造の破壊を引き起こすという
幻想に浸れる美学は
作品の緊張感の維持のために
非工学的な歴史は拡張された。
太いステンレスパイプの圧縮材と
ステンレスワイヤーのテンション材から
浮遊するテンセグリティは生まれない。
非軽量化されたテンセグリティはもっとも危険な非構造である。
彼が閉じたテンションネットワークを発見できなかったのは、
表現の根拠が、しばしば表現の自由という概念に覆われたまま
それは古代における道徳的経験の
道徳的意志の中心にあったものと変わらなかったからである。

自己規律

自己規律はグランチへの否定的情況を生成する。
それはシナジェティクスのデフォルトである。
シナジェティクスが
あらゆる教育機関で教育できない理由でもある。

肯定的デザイン

ほとんどのデザインは
自己規律から逸脱した
肯定的情況から生まれる。
宇宙がテクノロジーであることを
否定する情況から生まれる
デザインの短命さがそれを物語っている。
シナジェティクスが
政治的権力(グランチ)への抵抗に関わるのは
自己のテクノロジーとモデル言語との峻烈な関係性に到達した時だ。
それこそが、自己からの離脱を可能にする
肯定的デザインをもたらす唯一の方法だ。

非物質化

テンセグリティの歴史を書こうとするだけで
この張力に対する異なった種々の現実を考慮に入れなくてはならない。
つまり、それは固体の歴史であり、
国家がそれぞれ違う決定の機構を通して提示する構造の定義やその価値に
どの程度張力が順応してきたかどうかを研究する歴史でもある。
圧縮材と張力材が、構造を形成する構成要素として対比される歴史は
バックミンスター・フラーから始まる。
それ以外は、要塞建築のための張力が存在しない圧倒的な
権力による固体の歴史である。
対比されるまでのそれらの背景には
シナジーの非物質化へのテクノロジーを獲得するための
圧倒的な単独者によるモデル言語の歴史がある。

自然のデザイン

構造安定性を言葉ではなく、
<構造とパターン>によって表現しようとすることは
簡単ではない。
ほとんどいつも形態(Form)を模倣してしまうからだ。
自然を知るための抽象化において
もっとも困難な闘いは
自然の観察だけからは<構造とパターン>は
発見できないという限界から
モデリングを始めることにある。
自然のデザインの99%が可視的ではないからではなく
テンセグリティはジオデシック数学よりも早く
誕生している事実からも
自然は模倣できないようにデザインされているその場所から、
モデリングを始める時
風が吹きはじめるよりも
早くその瞬間を見分けられるだろう。

テンセグリティの排気量

基礎がなければ、自立しないテンセグリティは
構造ではないばかりか、
テンセグリティでもない。
浮力計算を必要とする船には排水量
(船を水上に浮かべるための押しのけられる水の重量)があるように
ある種のテンセグリティ構造には、浮遊するだけの排水量または排気量
(構造を水上または、大気中に浮かべるための
押しのけられる水または気体の重量)があり、
けっして大地に自重を流さない。
テンセグリティ分類学はこれからだが
その分類学は、つねに破壊されている。
数万年間、構造を作ってきた人間は
構造をまだ定義していなかったからだ。