反重力から反張力へ

宇宙を象徴する完全な半球が想定されたドームは
静止力学的な解法から 垂直荷重に耐える尖頭型ドームが最終的に変更され
1588年から1590年にかけて突貫工事が進められてついに頂塔は1593年に完成した。

この十六世紀の最初で最大のミケランジェロによる
サン・ピエトロ大聖堂のドーム構造をとりあげる場合でさえ、
圧縮力だけに依存しない張力と圧縮力の相互作用による構造が
最近の発見であるという驚きを抱かざるを得ない。
(その後の世界のあらゆるモスク建築は宗派を超えてこの様式を複製してきたが
そのすべては、完全な球状構造を再現したかったのである。)

宇宙パイロットの大気圏外宇宙への脱出経験からも
われわれは重力にまだ抵抗する習慣を
捨て去ろうともしていない。

重力とは
断面積のゼロの不可視の張力であり
もっとも安価な張力材である。

テンセグリティ構造においては
張力はつねに反・重力であり、重力はつねに反・張力である。
非鏡像的対称性にまだわれわれはとても不慣れである。