生活器へ

プロダクトデザインから生活器は生まれなかった。

デザインサイエンス、つまり
<生存のためのデザイン>と<自己のテクノロジー>の統合性は、
主に建築学と機械工学によって権力テクノロジーと記号テクノロジーに組み込まれ、
さらに、生態学や教育学や医学、そして心理学といった各専門領域に分断されることで、
その重要性と自律性に関与する基本機能をすっかり失ってしまった。

そして生存に必要な最小限の生活器としてのトリムタブでさえ、
無数のアブノックスの偽装された安全率によって、つねに先送りされるのである。

<デザインサイエンス>を
クリティカル・パス方を導入したプロダクトデザインや
科学的なデザイン理論として定義しているかぎり、
<生存のためのデザイン>と<自己のテクノロジー>は
デザインサイエンスの教育過程に限らず、
プロダクトの初段階ですでに排除されたままである。

偽装されたデザインサイエンスに共通する現象は
シナジェティクスの原理への探究心の欠如である。

シナジェティクスの原理への探究なくして、
<生存のためのデザイン>と<自己のテクノロジー>の
統合性(integrity)は生まれない。