疑似重力

構造が重力に対して服従する様々な形式では
圧縮力があたかも主体化されるようなシステムを
前提にしているかのようであるが
テンセグリティによって
その前提はすべて完全に覆されたのである。

圧縮力を生むのは、
圧縮材の自重や重力による反作用ではなく
張力材の張力によって圧縮力を生成するシステムであった。

テンセグリティ構造は重力に依存しない唯一の構造として
発見された。

重力に依存しない構造を
思考することさえできなかった歴史のなかで
人間が服従化されていく疑似社会構造は
上からだけではなく、ほとんど下から
滲み出てくる圧縮力(=疑似重力)によって形成されている。

疑似重力圏内で育った彼らは、
重厚な経済的・政治的人格を尊敬する傾向がある。

軽薄短小な構成部材からなるテンセグリティ構造を
理解できない社会構造は
自分たちの圧縮力を英雄化する習慣のある経済・政治指導者たちだけで
形成されているわけではない。

真の構造を捉える構造の定義は
テンセグリティの発見まで何も存在していなかったのである。