「一を識り十を見る」

「一を聞いて十を知る」は知識欲からの学習方法に終わる。
「一を識り十を見る」は、
経験から誘導される直観と想像力がなければ到達できない
抽象性ではなく、具体性なのである。
「一を識り十を見る」は、
観察に依存しない「存在の見立て」であり、
抽象性に置き換える誤謬からの脱却に始まる。

SYNERGETICS RBF 1975
Fig. 608.01 Instability of Six Vectors Except as Tetrahedron:
The alternate consequences of six vectored configurations.
Only the tetrahedron is fully stable. It is synergetic.

飛行するテトラヒリックス(Tetrahelix)

鳥の翼の左右に分断された飛行軌跡(下図の連続写真)を
さらに統合すると、
2重の螺旋体(Double-Helix)を描いていることが分かる。
この螺旋体は円筒に内接し、
円筒上に位置する隣り合う連続する2点間距離は最短になる。
鳥は飛行エネルギーを最小限にする方法を数学的に確立している。
さらに、この2重の螺旋体は
3重螺旋体の総三角形化された
テトラヒリックスの構造の一部を再生している。
鳥が飛行する4次元軌跡は、正4面体が生成する。

ナショナルジオグラフ PHOTOGRAPH BY XAVI BOU
https://wired.jp/2016/09/09/xavi-bou-ornitographies/#galleryimage_236905-1199_5


SYNERGETICS RBF 1975
The tetrahelix: a helical array of triple-bonded tetrahedra.

自己を模倣しないシナジェティクス

ベクトル平衡体の発見は
ジターバッグの発見よりも17年も先行し、
テンセグリティの発見は
ジオデシックスの球面分割理論とその実践よりも22年先行した。
原理の相互関係の理解の順序は重要でないが、
シナジェティクスの起源には無数の驚くべき事実がある。
シナジーによって未知を内包していくシナジェティクスは
発見・発明における自己を模倣しない
R.B.フラーの「Total thinking」によって半世紀間も練り上げられた。

SYNERGETICS RBF 1975
Fig. 413.01 Vector Equilibrium:
Omnidirectional Closest Packing Around a Nucleus:

極地の裏庭に回帰したイヌイット

水も、食料も、エネルギーも欠乏しないデフォルトが形成され、
その後に、人間はバイオスフィアにやって来た。
大多数は、分断して支配される見えない牢獄に幽閉され、
幸運にもその牢獄の外で生き延びたとしても
「欠乏か、さもなくば過剰」という無知と引換に、
そのありふれたデフォルトは奪われ続けてきた。

しかし、移動するための人工物(外洋カヤック)を開発したイヌイットは、
住居構造の三角形化によって極地の裏庭に回帰できた。

クジラの骨でできた半地下の冬場住居=イグルーの元型(Wiki)
鯨の骨は、風雪に耐えるように互いに三角形化されている。
この強固なフレームは防水性に富んだアザラシの毛皮で被覆される。

伏流水は80年を経由する

早朝にコップ一杯の伏流水を飲む。
地下の温度が体内を巡る。
水分子を一つだけ分離して印を付けたとして
この分子が再び私の新陳代謝に加わることはないだろう。
もしバンアレン帯がなかったらこの確率さえ消えるだろう。
この現実は他の惑星との最良の出来事から成り立っている。 

北アルプスからの伏流水は80年を経由する。

自律した最初の裏庭「栽培植物起源論」

収益のためではなく、人々のために行動する仕事によって、
自分が経験するものを他者と分かち合うべきだと考えているのは
希有な政治家でも、孤立したデザイナーでもない。
人間は他の惑星に到達する前に
宇宙の中のバイオスフィアの役割を捉える
テクノロジーを最初に裏庭で獲得するだろう。

「栽培植物起源論」
中国新疆伊犁州における野生リンゴ
リンゴ、西洋ナシ、サクランボ、アーモンド、クルミ、ネギ
などの重要な作物の起源地とされている。
https://www.yunnan-k.jp/yunnan-k/hsm/16-201503/823-himalayan-study-monographs-16-224-ooishi.html

全方向的に思考する存在 Total thinking.

Who are you? と尋ねられたなら
動揺を隠しながら名前と職業を答えるにちがいない。
仕事と寿命が短時間に変容する時代に、
「I am who am I.」の現実は、ますます遠ざかる。
1949年、バックミンスター・フラーは、
「私は全体を全方向的に思考する存在」(Total thinking)」と捉えた。
人間は局所的に分断して部分から思考するシステムから抜け出ようとしている。

SYNERGETICS RBF 1975
Fig. 401.00 Tensegrity Tetrahedron with “Me” Ball
Suspended at Center of Volume of the Tetrahedron:

この映画には圧倒的に他人が存在しない。

異なる経験を積むに従って
人生のシナリオを編集するという
時間を伴う予想外の試行錯誤が待ち伏せしている。
間違ったシナリオに耐えるよりも映画を見るほうが簡単だ。
時間を潰せると同時に他人を代理経験できるからだが、
7時間18分のこの映画には圧倒的に他人が存在しない。

『サタンタンゴ』4Kデジタル・レストア版
7時間18分あるのは、つまり人生と同じだからだ。(タル・ベーラ監督)

机上理論を破壊する自然のモデリング

ハイゼンベルグの「観察行為は観察される現象を変化させる」原理によって、
経験は観察する側と観察される側の相互作用を生む。
モデリングは、観察者と観察される理論に分割する行為であり、
机上理論を短時間に変容または破壊する操作主義に至る。
自然のクロノファイルが曖昧な個性と人工物を砕く。

海水中に生育している円石藻類は
球系構造の放射対称性に接近する最初のモデラーである。
シンメトリーの原型をもっとも経済的に形成するための
同型モジュールを採用する。
http://diatomology.org/topics/2014-1/2014-1-2.shtml

個人がシェルターを生産するための思想

地球外で生存できる環境を確立するのは、
科学である。
エネルギーと水と食料を再生しサバイバルする方法は実験済みだ。
そのコストは劇的に低下してきたが、
地球上を移動できない住居は量産されないまま課税される。
個人がシェルターを生産し課税されないようにするのは、
デザインではなく、思想である。

モバイル・テンセグリティシェルター 
直径6.5m 重量30kg カーボン製
デザイン・制作 シナジェティクス研究所 2008年

インタビュー:テンセグリティシェルターの開発の動機と過程について