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芸術教育

労働からの恐怖に
芸術が利用されることはないが、
労働による自由の獲得に
芸術は利用される。
自分の芸術以外のことは
何もしない芸術家を夢見ていた芸術家は
たいてい教育者になっている。
20世紀の超専門分化によって
芸術はもっとも利用されやすい
専門分野になっている。

隣人

私は、ついにエアコンを使わないで、
窓とドアを開けてこの夏を過ごした。
畑を隔てた隣の家族が何人いるのか未だに知らない。
きっと来年も彼らの名前も知らないだろう。
インターネットのある寂しくない田舎は私には便利だが、
私の選んだ無意識は
北半球の人間は南半球の人間がどんな生活をしているかを
知らない理由を説明できる。

瞑想

畑は3年もすれば鏡のようなものだ。
畑の私に対する態度は、
私の畑に対する態度そのものと考えていい。
そして、
さまざまな畑と田んぼが
絶えず人間について対話している。
その鏡の背面で。

インテグリティ(統合力)

言葉を単純にするのは知識ではない。
経験である。
理解を単純にするのは経験ではない。
統合力である。
統合力は
けっして人間独自の仕事ではない。
それは人間をとおして
流れ出るだけのものである。
統合されたものは
物質であれ、人間であれ
信頼できる完全性、
ある種の高潔さを備えている。

航海

熟考する(=weighable)とは
錨(イカリ)を揚げて出帆の準備をすることである。
錨が思考を妨げているのではなく
思考はまず錨を抜くことから始まる。
その時、錨の重さは船に移動する。
陸に繋がった停泊生活で身につけた
すべての重量を大地に流す習慣によって、
この重さを除外した航海計画は
とても危険である。

都市

庭に集まるどんな昆虫の一日でさえ
合目的な存在に見える。
都市で人間が生活すると、とても稀なシステムが起動する。
ただ存在しているだけの生活。
時間を奪われた生命が作り出す
ある種の免疫システムかもしれない。

グランチ

グランチは、
世界規模の大量生産と大量流通のあらゆる投機的企業を創始するために
すべての金融資産を支配してきた。
非共産主義圏の金融クレジット・システムを
意のままに動かすことができる。
グランチ(GR-UN-C-H)とは
全宇宙から真の富を現金化して奪う
見えない超法人格的な泥棒(GRoss UNiverse Cash Heist)〉を意味する。
負債総額、約64兆円のリーマンの破綻でさえその配当金額には及ばない。
1980年代のグランチはすでに一兆USドルを越える配当金を毎年支払ってきた。
そのグランチについて、われわれはあまりにも無知である。
『グランチ』は、1981年に出版された『クリティカル・パス』の直後に書かれた
バックミンスター・フラーの最晩年の著作である。
彼はあらゆる構造の歴史を扱った。
グランチという世界権力構造(Power Structure)も含まれたのである。
1960年代に書かれた
『宇宙船地球号操縦マニュアル』に出てくる海賊のアナロジーは
『グランチ』ではいっさい使われなかった。
それゆえに、
『宇宙船地球号操縦マニュアル』ほど理解されるまでに
半世紀の懐胎期間を必要とした。
同時に、グランチはますますひとびとの驚異になりつつある。

メール考

考えるときに時計を見るのは悪い習慣だ。
メールを読むのも控えよう。
重要なメールを送信する機会が
ますます失われるから。
送信よりも受信が多い生活は
エントロピー的だ。
太陽系では
もっと考合成をしよう。

条件反射

良いことが潜んでいる可能性があれば必ず起こる経験よりも
不具合が起こる可能性があれば必ず起こる経験のほうが多い
のはなぜか。
不具合を良い兆しとして歓迎しない条件反射からだろう。

遭遇

科学的原理に遭遇した経験を語る
科学者は僅かである。
その経験はとても科学的ではないからだ。
原理の存在という
神秘を認めない限り。