F1用のエンジンは、ほとんど1年がかりで調整してから、レースに出る。
新品の部品で構成されたエンジンは、すぐには調子よくならないからであるが、
エンジン調整費は、エンジン開発費の一部でもある。
一方、量産型の新車の場合は、
ユーザが購入してからユーザが調整することになる。
走行距離に無関係ではないが、
修理または整備した2年後の車がもっとも性能は安定しているだろう。
私のハイブリッド車は、5万キロまでに
バッテリーとエンジンの主要な部品に明らかな不具合があった。
しかし、修理代はいつも全く請求されなかった。
それは新車保証の範囲内だったからであるが、
不具合の納得いく説明もなかったばかりか、
主要な部品交換の記録も修理履歴には残されていなかった。
少なくとも、壊れた部品は私の所有物だから交換部品の返還を何度も求めたが、
無視されたので、私は疑問を感じるようになった。
実際、定期点検時などに設計上の不具合を秘密裏に修理をすれば
ユーザには非公開にできる。
修理代が請求されなければ、
この方法に多くのユーザは気がつかないかぎり、
もっとも経済的な損失を被るリコールにはならないのだろう。
非公開を前提にした修理の履歴のデータベースによって、
型式は同じ新車でも性能はより向上していることになるが
もし、このデータベースをユーザが閲覧できたなら、
完全な整備済みの新車は販売できないこともわかるだろう。
F1レースカーに走行距離ゼロの新車が存在しないように。
整備済みの商品が新品とは限らない。
しかし、ユーザはいつも新品が好きだ。
新品が好きなのは、計画的陳腐化のよきユーザでもある。
「ベクトル」カテゴリーアーカイブ
熊
熊は夏の終わりまでに交尾して受精した場合、
受精卵はできるがすぐには妊娠しない。
その受精卵は胚の状態で越冬前までの数カ月を過ごす。
秋の森で暮らして母胎の栄養状態が良ければ、
12月頃に胎盤にはじめて着床し、
冬眠中の2月頃に未熟児の状態で2、3頭の子を産む。
森のブナや栗の実が少なければ、胎盤を守るために着床しない。
十分な環境条件を準備してから確実に妊娠する熊には、
流産がないのである。
着床遅延は、予測的な計画のための戦略である。
森の番人は森以上にはならないテクノロジーを発明している。
危機
人間は役に立たないことを考えやすい。
危機はその集大成だ。
経済危機は、もっとも広く受け入れられることに
成功したコンセプチュアル・アートだ。
展示期間中はどんな兌換紙幣でも、入場料は無料になる。
時間
時間がないというのは嘘である。
本当に忙しい人は時間を作る。
時間は十分過ぎるほどあるから忙しくできる。
検索
新聞を読むより、
新聞を読まない方が知的な態度になったように、
ネットを見るより、
ネットで検索されない方が、
よほど独創的な時代になるだろう。
情報の共有が民主主義の擬態に利用されながら、
安価な無数のサーバによって、
情報の独占と編集が加速している情況では
真実は事実から遠ざかるばかりだ。
専門分化
自分以外の人間に頼むことができて、
しかも安く早くうまくやってくれるとしたら、
自分でやる必要はない。
つまり、専門家にならないで
知的に強欲に暮らしている人がいる。
これが、専門分化の目的である。
人損
つねに正直であれば、損をするかもしれないが、
損をして、ますます卑しい人が寄ってくるのは、
つねに素直に元を取り戻そうと抵抗しているからだ。
交流で磁化する発電機や変圧器の場合、
コイルの導線の抵抗によって失われる電気エネルギーが
システムの効率を決定的に低下させる。
これは銅損といわれる。
楽しいこと
静か孤独な時間を過ごしたいと言っている人ほど、
独りの時には、メールしたり、電話をかけたり、
テレビを見ている。
仕事と独りでいるのが楽しくないだけだ。
孤独に楽しく過ごすには、
自己のテクノロジーが必要だ。
国家
久々に古い段ボール箱類を整理していて、
高校生の時にのめり込んで持ち歩いて読書した文庫本を見つけた。
ニーチェの『ツァラトゥストラかく語りき』であった。
「国家というものは、あらゆる怪物のなかで最も冷ややかなものである。
それはまた、冷ややかに嘘をつく。」
という箇所に線が引いてあった。
政権交代しても半世紀前の密約が公開されない事情は、
16年間生きていれば、だいたいわかっているのである。
奪いグセ
金があるなら使え。
どうせ、だれかの借金だ。
でも、全体の借金は金利で増えるばかり。
そんなことは誰も気にしない。
誰かにはいつも金があるから。
経済とは奪うか奪われるかだ。