生きるために考える仕事と
考える仕事とは別だ。
<レイマン>が考える仕事を求めれば
すぐに失業するだろう。
生きるためには考える時間が必要だ。
<レイマン>の単純で個人的な関係は
その時間を絶えず生成する。
「コスモグラフィー」カテゴリーアーカイブ
レイマン(layman)
当時シルクスクリーンの印刷工だった私は
休日にテンセグリティモデルと
ベクトル平衡体モデルを制作しても
シナジェティクスを理解できなかった。
そもそも英語が読めなかったせいにしていたが
その魅力は脳裏から去らなかった。
————完璧な3Dでインプリントされたのだ。
40年前に遭遇したこの出来事は
バックミンスター・フラーに会う十分な動機であった。
最初の論文のスパーバイザーは
バックミンスター・フラーであったが
彼は英会話の素晴らしい最初の教師だった。
私が最初に書いた論文は、最初に印刷された数学論文となった。
私が完璧な<レイマン(layman)>からスタートした事実は
論文を書くよりも重要だった。
これほどまでに単純で個人的な関係を選択できたのは
バックミンスター・フラーが完璧な<レイマン>を理解する
真に知的な教育者であったからだ。
現在の知的産業社会が教育に期待するのは
私のようなレイマンではなく、超専門家たちである。
彼らが教育カリキュラムや株価、
そして、原子炉を設計している。
メタフィジックスモデル
飛行機のプラモデルを組立しても
航空力学が理解できないように
ベクトル平衡体モデルや
テンセグリティモデルを制作しても
シナジェティクスを理解できない。
完全な理解を求めれば、
すぐに失業するようにデザインされている
希有なメタフィジックスモデルである。
何かがあると感じても行動することは稀である。
知識は増えるほど行動しないように人間を教育できる。
みんな専門家になりたがっているから。
振動について
光合成生物が
光エネルギーを使って
水と空気中の二酸化炭素から炭水化物を合成しているように、
テンセグリティは
風や雪や雨といった外部からのエネルギーを
張力によって<より分散してより統合する>非有機的生命である。
<分割して統治する方法>は
外部からシステムを変容または破壊する方法であるが
<より分散してより統合する方法>は
システムを通過する外部エネルギーが
そのシステムをより統合する方法である。
共鳴現象は無生物の統合過程にも現れる。
複製と翻訳
道を覚えられない人が
赤い車を目印にするように
シナジェティクス原理を独自に発見できない人は
シナジェティクス・オブジェをより美的に複製している。
美的な指標にするために。
美しいオブジェを指標することは
シナジェティクスモデルを翻訳するよりも
簡単なことだ。
シナジェティクスモデルには
無数の未知な言語が潜んでいるがゆえに
翻訳に成功したモデル言語よりも
シナジェティクス・オブジェの方が複製されやすい。
シナジェティクスモデルの複製と
シナジェティクスモデル言語の転写・翻訳は、
互いに異なった行為である。
前者は形態と機能の複製が優先されるが
後者では概念の解読または原理の発見、
そしてその翻訳が優先される。
そして後者が新たな前者を生成するのである。
純粋さについて
経験と知識に身を任せ
思考に依存しても
シナジェティクスの純粋さは生まれない。
細胞テンセグリティは観察から発見されたが
テンセグリティは観察から生まれなかった。
顕微鏡が細胞を発見するまえに
細胞という概念が存在していなかった事実は
経験や知識ではなく
純粋さの現れなのである。
知識や経験によって
見えない存在を求めるノウハウは存在しない。
シナジェティクスの操作主義(operationalism)
観察するモデルは
ほぼ同時に観察される概念である。
発見された概念は
非同時的に発見される可能性があるモデルである。
葛藤、混乱、思考の飛躍が介在しない
自己のテクノロジーは
絶えず拡大していく瞑想に近い。
現状維持について
非有機的生命である
テンセグリティの現状維持とは
共鳴することである。
——-隔たった部分をより統合するために。
怖れや不安があっても
人間には様々な幻想が与えられ
互いに震えないように
全体から分断されている。
人間の現状維持とは
無知をより不連続化することである。
瞬間について
考えること、信じること、知ることを学べるが、
誰も原理を発見する方法を学べない。
自分以外の何者でもない存在を
言葉ではなく、構造とパターンによって表現しようとすることは
簡単ではない。
ほとんどいつも自然を模倣してしまうからだ。
発見する瞬間というのは、自然を知るための抽象化において
もっとも困難な闘いを通して
自分以外の何者でもない瞬間だからである。
その闘いなくしてウイルスのように
構造とパターンの無限性から抜け出す
その独自の瞬間はやって来ない。
modelability
modelabilityに対応する日本語はまだ存在しない。
テンセグリティは形態(form)から離脱し始める
シナジェティクスモデルの一つである。
真の機能はモデル化できても
形態化できるとは限らない。
形態(form)からシナジェティクス(model)へ移行する過程が
デザインサイエンスにおけるエフェメラリゼーションである。