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シナジェティクス方法序説

言葉は、自分の考えや経験を記録していく不可欠な道具であるが
その道具は、記録していく過程で変容する。
なぜなら、考えや経験は書くことでほとんど形成されるという相互作用を受けるからだ。

例えば、発見したシナジェティクスモデルを自らの手で具現化する時、
適切な材料の構成だけではなく、
それらを加工するための新しい方法の発見を伴う複数の経験から
モデル言語の形成過程と方法が露わになってくる。

しばしば、新たな方法の実験によって
更なるシナジェティクスモデルの発見もやって来るという相互作用は
確実に存在するメタフィジックスである。

この方法は、やがてシナジェティクスの独自な概念に変換される。
すべての発見されたシナジェティクスモデルには、モデル毎の経験の履歴が内包されるが
その情報は階層構造となっているので、非同時的に観察者の思考と経験にしたがって解読されていくかぎり、
理解における半世紀間のタイムラグはそれほど珍しくない。
理解は包含(comprehension)するための時間を必要とする。

「真の理解(comprehension)はつねに非同時的である。」(バックミンスター・フラー)

包括性

起こりえる他の可能性があるにも関わらず、
なぜある特定の出来事の流れに限って、他のプロセスに転位することができず
特殊な枷(かせ)だけが現実に生成されたかを問うことから、包括性への兆しが生まれる。

個別の出来事に包括的な情報が先験的に備わってはいないからこそ、
出来事と出来事との関係から発見される包括性は
他者と共有できる非同時的なリアリティをもたらす。

クリティカル・パス

正しい方法を学習する場合、
無数の間違った方法を避けることを学習することはできない。
間違いから学ぶ方法が理解への最短の学習方法である。

しかし、間違いを安全に避けるためには
最長の試行錯誤のプロセス(クリティカル・パス)を経なければならない。

クリティカル・パスは完全な理解の経路を形成する。
したがって、クリティカル・パスは
他者に対して最短の経路と最良の方法を提示することができる。

不誠実でケチな人間には不向きであるばかりか理解不能である。

他の方法

微生物には宇宙エネルギーを受容する他の方法があるのだ。
「地下深部からの湧き水に含まれる微生物のゲノムを調べたところ、
呼吸をつかさどる遺伝子がないばかりか、
体内でエネルギーを生産するための遺伝子も見当たらなかった」

これまでの生命を維持する仕組みが否定されたのだ。
塩素や農薬でバイオマスをほぼ全体を支配する微生物の殺戮を繰り返すだけの
生物学が黄昏るほどの発見ではないか。

どのように生存しているのか分からない実験に
挑戦することを止める遺伝子が人類に備わっているわけではない。

キノコ雲の外破と内破

物理学者は、キノコ雲と黒い雨の生成過程を科学的に分析していない。
2007年の犬のしっぽから再び引用したい。

真空管が破裂することを、内破(implosion)という。
内側に向かって爆発するという意味である。
この概念は、正しくない。
内破は、重力現象として見るべきである。
ヒロシマの原爆は、空中爆発(explosion)であったから
爆発と共に強大な球状空間が真空化され、
ついに、内部に強力な吸引力が発生した。
このもう一つの重力はやがて、上昇する螺旋運動を形成し、
キノコ雲の球体を形成した。
原爆はけっして都市を吹き飛ばす爆発力だけではない。
原爆の瞬間を表したヒロシマ原爆資料館の最新のCGのように、
爆発の放射(=圧縮力)のみに注目する原爆の物理学には、
内部への吸引力としての張力は不在である。
秩序を見分ける方法は、
もっとも大きなパターンの存在を発見すること以外にない。
そのパターンは、概念によってはじめて投影される。

2次的な美的基準

テンセグリティが張力を生成するのではなく、
圧縮力が張力を生成すると張力が圧縮力を生成する時、
その非同時的な相互関係がテンセグリティを維持する。

テンセグリティは多面体から発見されなかった。
面は存在していなかったから。

テンセグリティを生成させるための対称的形態は、2次的な美的基準からである。

上部構造(superstructure)からの

インフラストラクチャー(infrastructure)とは、「下部構造」を意味する。
ライフライン(Life Line)は、下部構造に属する。
それに対して、上部構造(superstructure)とは、法律体系や道徳・芸術・宗教などの
政治・経済的・社会的意識の諸形態のことである。
(したがって電気代をゼロにする程度の<オフグリッド>は、
上部構造からはけっして離脱できない段階なのである。)

モバイル・テンセグリティシェルターは、
上部構造にも下部構造にも属さない概念から設計し生産される。
テンセグリティシェルターを支える宇宙の諸原理は、
上部構造も下部構造も形成していないからである。

そして、私のテンセグリティシェルターの構造原理は、
まだ建築学からは解析不可能である。

シナジェティクスを理解する以前

16歳までの思い違いに目覚め、1975年に出版直後の『シナジェティクス』に出会い、
25歳までの更なる思い違いを排除する過程で習得した
思考のプロセスと方法を独力でモデルと論文に変換し、
1981年夏ついにバックミンスター・フラーに出会えた時の
安心感と信頼以上の科学的探究のための環境はないだろう。

モデルと論文を見たフラーが、シナジェティクスのすべてを理解していると評価してくれた時、
私はまだ1000ページを超える『シナジェティクス』を読破していなかった。

その時、10代の時に私がアメリカで教育されていたら
19歳ですでにバックミンスター・フラーと共同研究できていたと確信した。
その仮定法過去が未来を透視したその瞬間は、私の思い違いではなかった。
バックミンスター・フラーは、私が発見したシナジェティクスモデルとモデル言語に
しばらく魅入っていた。その時の会話は彼の指示で録音されている。

シナジェティクスに挑戦することは、シナジェティクスを理解する以前にある。
それを理解できる人だけがシナジェティクスに挑戦している。

思い違い(under a misapprehension)

どれほどの思い違いをして生きているのかに
気づかないように生きることができる。
それはDNAの間違った発明に違いない。

自惚れや自己愛を遠ざけるだけでは、この思い違いから解放されないだろう。
真実を求めていない群れの規律(=見えない空気)のなかで生活している時代は続く。
その時代毎の富が注がれながら。

シナジェティクスは、数学の思い違いからさえも解放する<方法とモデル>の宝庫である。
シナジェティクスは群れの外部で形成される。

真実は外部からやって来る内部形成(反・DNA)である。