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構造とシナジェティクス

人間は構造をデザインすることは
不可能だというメタフィジックスが
建築から退化したのは、
構造を思考するのではなく
発見するという驚くべき体験が
観察からではなかったからだ。

構造から「私のデザイン」が消滅する瞬間を受容するのは
シナジェティクスである。

自然のデフォルト

諸原理と素材、そして経済的な加工技術との統合する循環から
しばしば、構造原理の発見が訪れる。
それは、バージョンアップとは言わない。

使用している原理を最新版の原理へと切り替える作業は、
前例のない、しかし、自然が使用する原型(=デフォルト)への
クリティカル・パスなのだ。

大円軌道という地動説

春分の日の地球の影が
東経140°線と平行になりほぼ半円になるというのは
見せかけ上の現象であり、
天球上における太陽が通過する大円軌道であるというのも
観察者の見立てである。

太陽が天球を一周しているように見える地動説から
黄道(大円軌道)を説明したにすぎない。

地球も月も、螺旋軌道を描きながら太陽系を回転移動している。
地球外からの観察方法からどんな大円軌道も存在しない。

半円も大円も、時間を除外した幾何学に支配された観察方法である。

自己表現と相反する作用

優れたデザインには
主体の自己表現と自己放棄との間に、激しい往復運動が形成されている。

さらに、思考を声に出す行為によって
自己表現と自己放棄との間の非同時的な相反作用を増大させた結果は
しばしば発見と呼ばれる。

それは、思考の圧縮力と張力との相反作用の
見えないテンセグリティ化による自然のプリセッションに違いない。

思考を声にする

シナジェティクスは、
特殊な出来事(special case)の多様な存在を差異化し、
それらに固有の形式に変換して類別すると同時に
多様なモデル言語の出現を一般化によって単純化する。

高度に一般化されたシナジェティクス・モデルは、
しばしば、<思考を声にする>過程に出現する。

それは、自己の確実性から誘導される<閃き>からではなく、
言語形成に根ざす<他者性>の領域からである。

未完の書『コスモグラフィー』

シナジェティクスモデルと縮小モデルは本質的に異なる。

縮小モデルは、形態認識の手段として定着してきたが
シナジェティクス・モデリングによる未だ認識しえない関係を発見していく方法は
まだあまり知られていない。

シナジェティクスモデルは、物質化を通して
人格的段階と同時に非人格的な領域までを捉えようとしている。

バックミンスター・フラーは、私がその方法を彼と合う前から
直観的に実践していたことを感じていた。
1983年、『コスモグラフィー』は彼の遺稿となった。
(バックミンスター・フラー著 梶川泰司 訳 白揚社 2007)

『コスモグラフィー』で登場するシナジェティクスモデルの
隠れた<構造と意味>は、
手の思考力と直観との相互関係から生成される。

つまり、未だ認識しえない関係は
『コスモグラフィー』にこそ存在している。