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続)自己修練(self-discipline)

暗黒時代の固体概念からの脱出には、概念の牢獄化を管理していたキリスト教会が
隠蔽してきた幾何学(=球面三角法)の解放を意味している。
天体の位置や角度の計算に必要な球面三角法は、
地球を外部から観る行為から生まれる。

レオナルド・ダ・ビンチの独創的な木製のフレーム構造体(ダ・ビンチの星)には、
面(face)は存在しない。
後のヨハネス・ケプラーによって、ギリシア時代の固体的修練はついに破棄されている。
彼は五角形の対角線(星形化=Stellation)によって、
ついに新たなモデル言語を発見したのである。
ギリシア時代の大理石の正多面体からは、
内在する対角線の可視化は困難だったにちがいない。
(しかし、現在も古い概念から<ケプラーの星型正多面体>と呼ばれている。)

多面体の面(face)は、ギリシアから25世紀後のシナジェティクスによって
窓(window)という無(nothigness)に変換され、
各頂点でつねに出来事が存在する(somethigness)する場合、
隣接する各頂点間で、一つの関係(relationship)が形成される。

4つの出来事(somethigness)と6つの関係(relationship)、
そして4つの無(nothigness)が,
最小限の4頂点体(Polyvertex)の内部と外部を形成するのである。

自己修練(self-discipline)には、
相補的な内部と外部が必要である。

自己修練(self-discipline)

プラトンの正多面体モデルは、宇宙を構成する元素群を意味していた。
元素の概念は、大理石を多面体化した固体(solid)から開始された。

モデル言語は、自己のテクノロジーの習得プロセスにおいてもっとも発見されやすい。
しかし、モデル言語は、単純な3種の形態様式(solid、surface、wireframe)
または、それらの組合せから生まれない。

いかなる技術もノウハウも、自己修練(self-discipline)なしには獲得できないが、
プラトンの正多面体のモデリング体系は、
二千年間以上も固体的修練(大理石の対称的なカッティング技法)として継承されたのである。

無限責任

森は一つであり
樹木は、分離して数えられないように
森の樹木の構造デザインは
森に対する無限責任に基づいて再生的にデザインされている。

台風によって倒木した場合も
自然発火で森林火災を起こした場合ですら
森は移動して生き延びた結果である。

方法の実験

社会学、心理学、そして文化人類学や建築、数学においても
単純な構造という言葉の背後に隠れているものを
一つ残らず解放しなくてはならない。
それらが、同じ構造を意味していないなら。

少なくとも建築における構造は、
テンセグリティが発見されるまで科学的に定義されていなかった。

定義から学ぶべきではなく、
実験から開始すべきでもなく、
実験の条件を再現して、
それらを破壊する方法の実験から開始すべきなのである。

新たな生産要素を導入したりする企業家の経済発展論(イノベーション)から
このベクトルは根絶やしにされている。

続)非物質化への無限性

大円上に形成されるすべての弦は、球面上の2点間の最短距離の
さらなる最短距離となる。

大円軌道上にある弦のみによって形成される総三角形化は、
ジオデシックドームの直径の飛躍的増大だけではなく、
構造材としてのストラットとジョイントの重さにおいて、
単位体積あたりのそれら部材の重量を加速度的に軽減しながら
ジオデシックドーム全体の剛性と強度を増大させることが
バックミンスター・フラーの実証実験によってはじめて発見されたのである。
それはジオデシック数学には含まれない原理であった。

つまり、より大きくドームを建造すればするほど、
ジオデシック構造体を構成するストラットとジョイント類は、
より細く、薄く、短く、そしてより軽くできる技術となったのである。
自動車の重量に対する馬力、そして燃費の諸元表と同様に、
ジオデシックドームには重量に対する体積と表面積、
そして各部材の重量とコストの諸元表はつねに表示されるべきである。

工業製品の軽量化・薄型化・小型化によって、
グランチがより富めていった方法とその独占の歴史を認識するよりは
自然には、見せかけの軽薄短小のプロセスから逸脱し、
ついに非物質化への無限性に至る原理の存在を認識するほうがより重要である。

シナジェティクスとそのモデル言語を学ぶことによって、
工業製品以外の生存に不可欠なインフラや住居にも
非物質化への無限性に至る原理を発見し、
その原理をもっとも少ない物質に変換する方法に開眼できるだろう。

非物質化への無限性

シナジェティクスは、シナジーを体系化したと思われている。

シナジェティクスという
数学的・科学的的経験の意味と構造を理解するために、
古代ギリシアの数学者、天文学者による地球を外から見る球面天文学と
黄金比と共に無理数、そして球の半径から表面積と体積を求める法則を発見し
その思考のプロセスをモデリングしたピタゴラス、
1596年に『宇宙の神秘』を出版し、プラトン立体と球面天文学との
関連から宇宙の階層構造へ至るメタフィジックスに気づいたヨハネス・ケプラー以外に
その系譜らしきものは見つからない。

ケプラーがピタゴラスに似ていないように、
バックミンスター・フラーは他の誰にも似ていないが、
20世紀においてアインシュタインが物理学でしばしば使用した
球面上の2点間の最短距離の概念こそは、
ジオデシック数学以上のシナジーの系譜かもしれない。

形態と素材を超えて

デザインサイエンスの役割は、
可視的な形態に、形態からは推測できない見えない機能を付加すると共に、
形態に抗した重さのない機能による<非物質化>の段階を示唆することにある。

シナジェティクスは、原理というメタフィジックスへの誘導によって
形態と素材を相互に打ち消す力を持っている。

形態と素材は、つねに掛け替えられる。
——–核子の交換によって、異なった原子核が生成し、または消滅するように

掛け替えのない唯一無二の自然は、
情緒的で可視的な一時的なエコロジーである。

シナジェティクスとデザインサイエンスの相補的な統合によって
コスモグラフィーは漸進的に変容していく。

直観と幾何学

神聖幾何学が神秘について直観的に語りうることは決してないだろう。
なぜなら、幾何学の神秘を保留しているのは直観のほうだからだ。

電磁誘導は、磁束が変動する環境に置かれた導体に電位差(電圧)が生じる現象である
電流(=思考)がつくる磁場の変化で新たな誘導電流(=直観)が生じる。
直観は、電磁誘導の結果であり、磁場の変化が新たな思考を生む。

シナジェティクスは、21世紀の直観誘導幾何学である。

神秘と未知に接近しながら、数学性と科学性が後退しないのは
シナジェティクスだけである。

点、線、面という3つの視覚言語から

剛性と強度を備えた剛構造や
固有周期を長くして構造全体の剛性を低くする柔軟構造という概念から遊離した
弾力性、表面張力(膜力)、張力などの概念によって
これまでに見えなかった新しい構造とパターンがやって来る。

シナジェティクスにおいて、
面は、テンセグリティのように構造の構成要素ではなかった。

点、線、面という3つの古代ギリシアから引き継がれた視覚言語が、
ジョイント(joint)、ストラット(strut)、窓(window)に
それぞれ翻訳された後に物質変換されるだけではなく、
3つが互いに融合した構造とパターンにおけるもう一つのモデル言語に誘導され、
シナジーに支えられた新たな物質観に置換される可能性がある。

その操作によって、張力はストラットの表裏面にも絶えず張り巡らされるという
物理的な優位性と経済性を証明できる。

そして、テンセグリティの定義も変わる。
圧縮力と張力の働きを、テンセグリティのように
鏡像的で相補的な構造部材としての<圧縮材と張力材の対比的(=twoness)関係>に
もはや還元できないのである。

構造のシナジーは、つねに未知(unknown)からやってくる。