シナジェティクス」カテゴリーアーカイブ

予測的デザインサイエンス

構造とパターンは、
相互的に直接作用しながら変容する織物である。

面、線、点の相互作用から
閉じた新たな構造のパターンが発見される。

しかし、純粋な構造のパターンの目録には
ストラットやジョイントや皮膜のコストの情報は含まれない。

デザイン行為は、異なった原理間の調整のみならず、
それらすべての要素間の相互作用を調整する段階に存在する。

その認識は、予測的デザインサイエンスに属する。

その単独者へ向かう私の自己のテクノロジーの修行は、
バックミンスター・フラーに会った29歳から始まったが、
幸運にもその物質化の最終段階がついに訪れた。

短命な閃き

独創的なアイデアの源泉を
閃きに依存する人々の幻想は驚くほど平凡でありながら、
傲慢さを巧妙に隠蔽したオリジナリティに身を包む。

一瞬であろうと、徐々にであろうと
オリジナルなアイデアが閃くと言うことはありえない。

それはどこかで見た誰かのアイデアにちがいない。
瞬間的に思い浮かぶ他者のアイデアを模倣する人々に
共通する幻想は短命だ。

風が吹かなかった場所は存在しないが
風は、異なった場所で
同時に同じ方向から吹かないトポロジーにしたがって
独創的なアイデアは、ついに発見されるのだ。

発見は、短命な閃きとは無縁である。
発見は、計画的偶然が織りなす主体的な産物だ。

独創的なアイデアは、人間には属さない輝きをもたらす。
それは、自然の原理に触れた瞬間の電磁誘導なのだ。

自然の構造

構成要素とは、
どのような要素を使って構造が組み立てられるかを
検証した結果である。

検証なき構成要素からは
どんな構造も主体的な思考の対象から逃れてしまう。

主体的な思考から発見される自然の構造は
つねに先験的である。

有用性(utility)とメタフィジックス

シナジェティクス領域から
デザインサイエンス領域に移行する過程で
理論的段階から実践的段階へと質的に転位するだけに終わらない。

実践的段階が理論的段階へと押し戻すほどの
工学的技法を超えた数学的な原理の発見に遭遇したならば。

異なる2つの段階を通過し、往復することで
異質な原理から成り立つビジョンへ移行できているかどうかが
生存するための<有用性(utility)>に到達できる
信頼すべき兆しなのである。

テンセグリティ・シェルターの生産過程で遭遇する
シナジェティクス原理の発見は、
最大のプリセッション(計画的偶然性)である。

シェルターが完成すれば、
その内部で私は再びシナジェティクス論文を書くだろう。

主体的に学ぶ

構造は、根本的に自由だという認識や
構造は、社会的な条件によって決定されているという
分析からだけでは、構造を知るには不十分である。

シナジェティクスを学ぶと、
構造はつねに発見されていることがわかる。

シナジェティクスを主体的に学ぶとは
主体的に構造を発見し、
これまでに存在していなかった
構造とパターンを明らかにすることである。

反・ブーツストラップ理論(Bootstrap Theory)

pull oneself up by one’s bootstrapsとは、
自身のブーツストラップ(編み上げ靴のつまみ皮)を使って
自らを自力で持ち上げるという意味である。

テンセグリティは、そのモデルが発見された後も
どんな足場(根拠)もない場所から
靴のブーツストラップ(編み上げ靴のつまみ皮)を自分で引っ張ってあげて
空中浮遊しようとする反物理的構造と見なされた。

実際、スネルソン:Kenneth Snelsonでさえ、
球状テンセグリティのモデル化を思い描くことが出来なかった。

では、ブーツストラップ以外のアイデアから

誰が最初に、煉瓦造りやコンクリートの固体の構造と重量の歴史から、
非固体的な方法によって
圧縮力と張力を純粋に分離して理解する可能性を求めたのか。

それは、建築家ではなかった。


誰が最初に、圧縮材と張力材の機能を互いに分離して
非同時的に作用する原理の存在を証明する実験に成功したのか。

それは、物理学者ではなかった。


誰が最初に、構造とは、不連続的な圧縮力と連続した張力との
非鏡像的な相互作用のことだと定義できたのか。

その背景を、考察したのは科学哲学者ではなかった。

しかし、テンセグリティ構造原理の発見とその理論化は
バックミンスター・フラーによって完成したわけではない。

テンセグリティは、浮遊する雲(cloud nine)のように現れてから
半世紀以上も経過したが、
まだ十分なテンセグリティモデルが発見されていない可能性がある。
テンセグリティはまだ元素周期律表のように分類されていないのだ。

目的論(teleology)

シナジェティクスが、圧政の知識、または、
建築や環境デザイン、そしてプロダクトデザインの方法になることはない。

宇宙と自己との関係を絶えず発見していく
<目的論(teleology)>であるかぎり
自己を除外した環境デザインは存続できないだろう。

絶えず非固体的

テンセグリティシェルターの方がジオデシックドームよりも
剛性が高く軽量でありながら、より安全で経済的であるのは
客観的実験からだけではない。

ジオデシックドームにおいて、それを構成する構造材の各端部は
硬い樹脂系や金属系のジョイントで相互に結合されるが、
哺乳類や爬虫類の間接においては
骨と骨を非接触にするための隙間には、ガスを十分に含む滑液が存在する。
それらの関節には非固体的な液状の潤滑剤が介在する。

骨と骨を非接触にするために
自然がデザインする張力材やジョイントは、
絶えず非固体的である。

受動性の否定

張力は、受動性に閉じ込められていた。

テンセグリティは受動性の否定から生まれた。
圧縮力と張力は、共振するために共存している。

その相互作用こそ、
気取ったり、懲りすぎた細部と技法のすべてを排除するのである。

アーティファクト(artifact)とは何か

見えない概念を記述し理解するには、
自然の形態を模写するのではなく、
自然の原理を発見し統合されたテクノロジーに
置換する試行錯誤が先行しなければならない。

モグラや鯨は自然の機能と相互作用できる
独自のアーティファクトをフィードバックした結果、
最適な形態を採用したに違いない。

つまり、先行するアーティファクトの模倣から
人類が直面する諸問題を解決することは出来ないのだ。