シナジェティクス」カテゴリーアーカイブ

知られざる『シナジェティクスvol.3』

シナジェティクスにさらに未知なる原理を導入するために
シナジェティクスの思考を問い直すということは、
バックミンスター・フラーの遺産であるアーティファクトの現実的な不可欠な破壊や解体、
そして別な次元への転換と応用、
こうしたものへと自発的に到るような何かを経験することを意味している。

例えば、私には、
ジオデシック理論(球面上の2点間の最短距離の前提の否定)の破壊、
テンセグリティ理論(圧縮材の不連続性)の解体、
シナジェティクスモジュール理論の拡張と更なる一般化などが可能かどうかの
挑戦と実験を繰り返すことを含んでいた。

フラーなき最初の時代に、幸運にも私の挑戦した諸結果を直ちに最初に評価したのは
半世紀に及んだ『シナジェティクス vol.1&2』の編集者アップル・ホワイト氏であった。
それは、彼が3日間の私のシナジェティクスワークショップに参加した時である。
(バックミンスター・フラー研究所が主催した1980年代後半から90年代かけて始まった
このカリフォルニアでのいくつかのワークショップには
当時のすべてのフラーの後継者たちが世界中から参加した。)

フラーの遺言で彼は、シナジェティクスの編集権を単独で継承していたが
驚くことに『シナジェティクス3』の編集にすでに関与していた。
その編集のために、私にコンタクトしてきたのである。

『シナジェティクス3』を未完のままで終わらせたくはなかっただろうが
後に彼は健康上の理由でその編集作業を辞退してスタンフォード大学に委託した。
現在デジタル化の準備がなされている。

レイマンとして自己規定したアップル・ホワイト氏は
『コスモグラフィー』(白揚社 2008)の日本語版の編集協力者でもある。

シナジェティクスの技法

シナジェティクスの探究というものが
もっぱら新しい幾何学上の知識の獲得のみへの
願望によって遂行されるならば、
そうした探究にどれほどの価値があろうか。

真理を発見する技法が発見されたとしても
それは新しい幾何学上の知識によってではないからだ。

(もちろん、バックミンスター・フラーはそれを発見していたが
遺書となった『コスモグラフィー』(白揚社 2008)には
不完全であるが記録されている。)

許容の限界

学習は、許可と禁止という分割思考によって征服され
認識には、最適と見做される平均的思考方法が定められ、
行動に関する許容の限界が無意識的に形成される。
(例えば、シナジェティクスが幾何学として、
デザインサイエンスがデザイン学として専門分化の限界内で認識される。)

こうしてた学習方法と擬似的な思考の構造は、表裏一体となる。

許容の限界は
ついに<個人的な選択肢>として受容され続けている。

こうして、両親の愛情と共に
人間の直観と詩の一行は去っていく。

集団で作動する多様なこうした力関係から
絶縁するテクノロジーがシナジェティクスである。

破壊する知

シナジェティクスは
デザインサイエンスに相互作用するから
シナジェティクスを優先することによってではなく
あるいは、シナジェティクスは
有用だからシナジェティクスを応用することによってではなく
シナジェティクスは
何らかの<破壊的な知>を生み出す。

少なくとも、それは
誰かかが誰かを教えるための、
あるいは
誰かから何かを学ぶための<知識>ではない。

そういう関係さえも破壊しながら
<統合していく、動く知(integrity)>である。

相互作用

デザインサイエンスが
プロダクトデザインや
インダストリアルデザインと異なるのは、
デザインサイエンスが
シナジェティクスと相互的に直接作用するからだ
——–より加速度的に、より経済的に、より軽量に、
そして、より数学的に、より包括的に。

Cosmic Integrity

デザインサイエンスは、アメリカにおいても
それ以外の世界にあっても
学的党派性を陳腐化しながら存続しているのは
バックミンスター・フラーが自ら
学的党派性を否定して行動していたからではなく
宇宙の知的存在に対する信念(faithful to cosmic integrity)を
疑わなかったからである。

デザインサイエンスのクリティカル・パスには
バックミンスター・フラーの偶像化を否定するプロセスがある。

——それは、独創的なシナジェティクスモデリングによって
非局所的な過程を乗り越えるプロセスでもある。

その同時的かつ非同時的で
多様な<cosmic integrity>は
重さのない一つの構造とパターンに変換可能である。

生活器というマニホールド(Manifold)

デザインサイエンスを直接に実践する代わりに
シナジェティクスについて語るよりも
シナジェティクス言語を語らずして
デザインサイエンスについて語れないよりも

シナジェティクスをなぞって
デザインサイエンスを
デザイン理論だと思わせる人々は
生活器には無縁である。

バックミンスター・フラーの最初の量産型のデザインは
ジオデシックドームではなく
トイレ付きのバスルームだった。

エンジン以外でマニホールド(Manifold)を使用した最初のデザインだ。

移動する外部

外部の事物を若返らせ
同時に自己との関わりを変容させるのは
思考ではない。

認識対象の領域を拡張する手段としての
シェルターで移動するか
内部から移動する外部を観察する方法によるのである。

シェルターがジオスコープ化するこそ
移動する外部そのものである。

シェルターは
バイオスフィア内部の静止衛星である。

シナジェティクスと直観

シナジェティクスは感性的直観に対立しない。

シナジェティクスは
知性には還元不可能なものとされている
感性的直観の本源的な生産性をモデリングに求める。

形態(form)とモデル(model)の相違は
メタフィジックスにあるだろう。

そして、プロダクトデザインと
デザインサイエンスとの圧倒的な相違は
目的論(teleology)にあるはずだ。