デザインサイエンス」カテゴリーアーカイブ

住居機械(dwelling machine)

動物と人間の構造における身体上の本質的な相違で
類人猿からの人類の直立が独自に問題視されるほど
建築の構造に於ける直立性は、人工物として認識される。

しかし、建築の構造に於ける直立性と自律性は
大地を除いてデザインされたことはない。
鉛直性は、その不動性と共に建築テクノロジーの産物として対象化されている。

人工物のなかでテンセグリティは
大地から自律しただけではなく
鉛直的テクノロジーから離脱して、ついに浮遊する構造として出現したのである。

地震で倒壊する危険を回避する最新の免震、制振、耐震構造といえども
より軽量化された浮遊する構造とは無縁である。

大気圏内を浮遊して自由に移動する
船舶や航空機の構造は
大地に依存しない反直立的な構造である。
直立性または鉛直性は、地表に生存する生命の
重力に対するテクノロジーの断片的段階に生じている。

直立性に基づいた不動性空間に生命の永続性は期待できないだろう。
哺乳類で唯一住居を購入する人類だけが
空間を移動する安全な住居機械(dwelling machine)を獲得できるのである。

予測できない存在

圧縮材は細長比の限界まで圧縮力に耐え
張力材は破断の限界までを許容するといった
いつも決まって定義される機能の分担を拒否しなければ
構造は発見されなかった。

機能の分割または分業から
どんな統合性(integrity)も生まれない。

圧縮材も張力材も統合性によって
限界を拡張する場合でさえ、
より軽くより細くデザインされる。

統合性(integrity)は
つねに予測できない存在である。

意識的な漸進的変化

デザインサイエンスは、個人を捕らえて、
個人が何者であり、何が可能かを理解し、
個人の果たすデザイン行為の有用性を知り、
群れの中でどうふるまうか、
そして様々な道具類をどのように配置したらよいかを知るためではなく、
宇宙と人間との相互関係から個人の思考と行動に変化を与える
意識的な漸進的変化のプロセスなのだ。

そのあまりにも意識的な漸進的変化こそ
自己のテクノロジーの反映である。

知られざる『シナジェティクスvol.3』

シナジェティクスにさらに未知なる原理を導入するために
シナジェティクスの思考を問い直すということは、
バックミンスター・フラーの遺産であるアーティファクトの現実的な不可欠な破壊や解体、
そして別な次元への転換と応用、
こうしたものへと自発的に到るような何かを経験することを意味している。

例えば、私には、
ジオデシック理論(球面上の2点間の最短距離の前提の否定)の破壊、
テンセグリティ理論(圧縮材の不連続性)の解体、
シナジェティクスモジュール理論の拡張と更なる一般化などが可能かどうかの
挑戦と実験を繰り返すことを含んでいた。

フラーなき最初の時代に、幸運にも私の挑戦した諸結果を直ちに最初に評価したのは
半世紀に及んだ『シナジェティクス vol.1&2』の編集者アップル・ホワイト氏であった。
それは、彼が3日間の私のシナジェティクスワークショップに参加した時である。
(バックミンスター・フラー研究所が主催した1980年代後半から90年代かけて始まった
このカリフォルニアでのいくつかのワークショップには
当時のすべてのフラーの後継者たちが世界中から参加した。)

フラーの遺言で彼は、シナジェティクスの編集権を単独で継承していたが
驚くことに『シナジェティクス3』の編集にすでに関与していた。
その編集のために、私にコンタクトしてきたのである。

『シナジェティクス3』を未完のままで終わらせたくはなかっただろうが
後に彼は健康上の理由でその編集作業を辞退してスタンフォード大学に委託した。
現在デジタル化の準備がなされている。

レイマンとして自己規定したアップル・ホワイト氏は
『コスモグラフィー』(白揚社 2008)の日本語版の編集協力者でもある。

破壊する知

シナジェティクスは
デザインサイエンスに相互作用するから
シナジェティクスを優先することによってではなく
あるいは、シナジェティクスは
有用だからシナジェティクスを応用することによってではなく
シナジェティクスは
何らかの<破壊的な知>を生み出す。

少なくとも、それは
誰かかが誰かを教えるための、
あるいは
誰かから何かを学ぶための<知識>ではない。

そういう関係さえも破壊しながら
<統合していく、動く知(integrity)>である。

相互作用

デザインサイエンスが
プロダクトデザインや
インダストリアルデザインと異なるのは、
デザインサイエンスが
シナジェティクスと相互的に直接作用するからだ
——–より加速度的に、より経済的に、より軽量に、
そして、より数学的に、より包括的に。

沿岸部文明

お金を稼いだ結果、喜びをとても遠くにまで探し求めなければならない。
火星計画は、ひとつの答えだった。

より幸福であるためのモバイルは
重要な遺伝子の複製の結果だが
デザインサイエンスは
大気圏内宇宙へのモバイルで十分である。

80%の人々はまだ沿岸部で
生まれて死んでいる。
沿岸部文明の人生は、まだ静止的で固体的である。

エネルギーと食料の生産技術を奪われたインターネット社会は
閉ざされた行動力の代用品にすぎない。

Cosmic Integrity

デザインサイエンスは、アメリカにおいても
それ以外の世界にあっても
学的党派性を陳腐化しながら存続しているのは
バックミンスター・フラーが自ら
学的党派性を否定して行動していたからではなく
宇宙の知的存在に対する信念(faithful to cosmic integrity)を
疑わなかったからである。

デザインサイエンスのクリティカル・パスには
バックミンスター・フラーの偶像化を否定するプロセスがある。

——それは、独創的なシナジェティクスモデリングによって
非局所的な過程を乗り越えるプロセスでもある。

その同時的かつ非同時的で
多様な<cosmic integrity>は
重さのない一つの構造とパターンに変換可能である。

生活器というマニホールド(Manifold)

デザインサイエンスを直接に実践する代わりに
シナジェティクスについて語るよりも
シナジェティクス言語を語らずして
デザインサイエンスについて語れないよりも

シナジェティクスをなぞって
デザインサイエンスを
デザイン理論だと思わせる人々は
生活器には無縁である。

バックミンスター・フラーの最初の量産型のデザインは
ジオデシックドームではなく
トイレ付きのバスルームだった。

エンジン以外でマニホールド(Manifold)を使用した最初のデザインだ。