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生活器(livingry)

固定によって安定するすべての構造は
<大地>に自重を流している危険な構造と言える。
その<大地>とは、そもそも
不動を前提にした作業仮説であるから。
免震装置も、耐震装置も
構造に付加されたそれらの自重を支えるのは
割れない沈まない地盤である。
構造とパターンを理解せずに
ただ構造を安定させたい結果、
ジオデシック構造でさえ
移動できないように過剰な物質で固定されてきた。
<構造>が太陽系の軌道間を移動する場合、
科学的な安全率と単位体積あたりの重量計算は不可分である。
そして、<構造>が大気圏内を頻繁に移動する場合は
さらに空気力学的で熱力学的な配慮が加わる。
<構造>が強度と剛性を損なうことなく
最軽量にデザインされたテンセグリティ構造以外に
<生活器>の信頼できる構造は存在しない。
この<生活器>が
最初の移動するもっとも安定した自律的<構造>である。

続)内部と外部について

それは、自然から隔離するテクノロジーではなく
自然と融合する峻烈な試みから生まれる。
大地を移動するこの宇宙船は
船や自動車、飛行機に比べてまだ不完全だ。
つまり、移動を止めてしまった家に
長くしがみついた結果
内部と外部の生きた相互作用が消滅しかけているのだ。

内部と外部について

アウトドアは
ドアを隔てて内部と外部が存在する家の概念から生まれた。
その内部はドアや壁の厚みで包まれている。
自然から隔離するためのこれらの厚みが
建造コストの大部分である。
永続的な皮膜とモバイルシェルターとの結合方法の
経済的な発明がなければ
紫外線と風雨と外気温の激しい変化で短命に終わるように
皮膜と構造を統合するテクノロジーがなければ
自由と自律から、簡単に分離そして解離される。
内部と外部を隔てるテクノロジーから
モバイルシェルターは生まれない。

脱カタログ化

ダイマクションカーはボディとシャーシー以外は
すべて当時の自動車部品のカタログから注文してアセンブルされている。
V8エンジンはフォードが提供している。
1930年代からすでに新製品は既製部品から構成されていた。
それから80年以上が経過した現在
すべての部品をオリジナルで生産するメリットは
より少なくなっている。
無数の工場から出荷されたままの<デフォルト群>は
21世紀の予測的デザインサイエンスがプロダクトする
<トリムタブ>のほぼ完全部品になる可能性は
加速度的に高まっている。
しかし、異なった複数の既製品を矛盾なく統合するには
既知となった機能との葛藤や
新たな用途開発への混乱をもたらす断片化と
頻繁に闘わなくてはならない。
開発過程での葛藤や断片化はデザインの不足よりも
関係性の発見の不足から生じているからだ。
異業種界の無数のカタログに潜んでいる
新たな関係性の発見とそれから発生する機能の獲得は
自然界から新種の生物を発見する行為に似ているだろう。
デザインサイエンスの実践によって
新しいユーティリティが従来のカテゴリーの相互関係を陳腐化する時だ。
シナジーという脱カタログ化現象は広範囲に始まっている。

モバイルシェルター vs スモールハウス

<スモールハウス>は
単位体積あたりの重量が
ほとんど軽減されていないならば
省エネとは言えない。
エネルギーと食糧と住居の三代要素を
まだ解決できていない。
それぞれの要素を縮小しただけである。
あるいは
都市と家族の矛盾から分離したにすぎない。
増殖しながら移動する人類に不可欠な
全天候性の自律的なモバイルシェルターを
開発する理由が忘れ去られる<平時>が終わった時にこそ
最初のモバイルシェルターは生産される。
バイオスフィアの陸地の80%は、依然未使用である。
驚くことにその大半は北半球にある。

モバイル有機体

人間は大地に根を生やすことはできない。
農村の過疎化は
都市に人間が移動した結果である。
都市とは一時的に滞在する人々が増加した場所である。
ある場所により多く定住するためには
人間はつねに移動しなければならない。
足の生えた人間が大陸を移動するには
大地に固定された<基礎>ではなく
共に<動くシェルター>が必要だ。
森でさえ大陸を移動した結果だ。

アジア的原型

バックミンスター・フラーの<doing more with less>は
自律的で他利的な思想を背景にして形成されている。
1930年代の大恐慌から第2次世界大戦が終わるまでの間に
デザインサイエンスは
もっともアジア的原型に接近したのである。
デザインサイエンスが難解に思われるのは
21世紀の日本人がひたすらケチな個人主義になったからである。

客観的プロセス

仮説理論の試行錯誤から実践するまでの
全プロセスを客観的という。
その全過程をほとんどデスクトップで
完了できると考えるのはまだ主観的である。
シナジェティクスでは
仮説理論の試行錯誤から実践するプロセスに移行する
デザインサイエンスまでに
何度もシナジェティクス・モデリングを繰り返す。
———-従来の概念の破壊をより純粋にするための。

同一性(identity)

自分自身でありたい欲望は
その他の試みがことごとく失敗してきた
経験から生まれる。
脳が形成するこの特殊な自己同一性(self identity)から
普遍化は生まれない。
同一性が損なわれると
社会での役割拡散や排除性が生まれるのではなく
(たとえ、同一性が獲得されたとしても)
宇宙における人間の役割が
除外される過程が反復されるだけである。