裏庭(背戸)」カテゴリーアーカイブ

温泉

30分程度のドライブで下山すれば温泉がいくつかある
そんな山脈の真ん中に住んでいる。
この山脈ではニュースには取り上げられない程度の
地震がいつも小刻みに発生している。

地殻の構造プレートの運動エネルギーは
地殻に含まれる放射性元素の崩壊によって発生する
放射エネルギーが源泉である。

天然の温泉は、その小さな天然の原子炉の核分裂のメカニズムが発見されるまでは、
いわゆるマグマの<地熱>によって温められた地下水が
自然に湧出するもの考えられていた。
宇宙からよりも大地からの放射線量が多いのは、地球内部の元素崩壊による。

天然で湧き出てくる温泉以外の投機的なボーリングによる温泉開発は
お湯の排出によって河川や地表面の温暖化を加速しているばかりか、
地下に眠っていたメタンガス(二酸化炭素の24倍程度の温室効果)を
大気中に常時排出する場合がある。
京都議定書には温泉開発の禁止は含まれなかった。

温泉の地熱によって癒されることばかりを求めても
バイオスフィアにとって安全とは限らない。   Y.K

消えたミツバチ

アメリカの農場からミツバチが突然消えた。
携帯電話などから発せられる電磁波が
ミツバチの方向感覚を狂わし、
結果として巣から出たまま戻ることができなくなったといわれている。
ミツバチの他花受粉には、コストがかからなかったが
これからは農薬以上に高価な商品になるだろう。

そして日本では田んぼのカエルが激減している。
私が住んでいる穀倉地帯でも
昼となく夜となく続くカエルの合唱は急に途絶えている。
稲作にカエルは不可欠だ。
これらは偶然か、意図かは別として、
都会で毎日飲料水を買うように
やがて農業でも生きるためにミツバチやカエルを買うことは、
常識になるだろう。

このまま局所的な危機毎に、エコロジーを理解していくならば
もっとも高いコストを支払い続けなければならない。
エコロジーは産業社会にとって最大のブラックボックスだ。       Y.K

稲妻

遠くに聞こえる稲妻の音
激しい雨の後の曇り日での焚き火は、
すぐに消えて儚い。

近くに落ちる稲妻までは、あと2週間も待たなければならない。
それまでは、音楽を聴きながら
近くて遠い友人に短いメールをたくさん書こう。

年金問題に熱中しても
なかなか死ぬ理由は見つからないらしい。
せいぜい「100人の村」をみて生きる理由を傍観する
家族に電話しよう。
遠くに聞こえる稲妻の音をきかせよう。     Y.K

本当のコスト

砂漠を覆っていた大気は、雲を生成する森を瞬時に覆うことができる。
しかし、大気が森を生成したのではない。
植物が大気を生成したのだから。

植物のこの気象機能は、植物をいくら観察しても分からなかった。 
そして、森や砂漠だけを見ても分からなかった。 

森を砂漠にするテクノロジーのコスト計算から、
砂漠を森にするテクノロジーのコスト計算は分からなかったが、
自然が気象に支払うエネルギーコストを
われわれの経済では支払うことができない。
そしてそれが本当のコストである。

本当のコストは、太陽系のエネルギー銀行が収支決算している。
惑星地球は、毎年太陽からの莫大な贈与のみで運営されている。
贈与で生きていながら、金利を考案し返済させ、
人類以外の生命と非生命が協働して地下エネルギー銀行に預金した富を、
他の生命と非生命の許しなく奪う生命は、
いまのところ人類だけである。       Y.K

   

湿度変化のパターン

昨晩は、寝る前の湿度計は80%を越えていた。
しかし、早朝から晴れたお陰で、梅雨時期には
珍しく快晴になった。
中央中国山脈の森の中でさえ
梅雨前線が突然消えたと思うほど初夏めいて、
5月を凌ぐ最良の晴天日を思わせた。
ところが、お昼までに、湿度30%まで一気に乾燥してしてしまった。
この間、わずか3時間程度である。
前日の雨で、森の新緑にはかなりの水分があったが、
大気は、短時間に表面の水分をほとんど奪い去った。
その結果、乾燥の度合いは、
秋の乾燥時期を越える記録となった。

拡大している中国大陸の砂漠化の現実が
迫るほどの乾燥の加速度であった。
この加速度は、単に高気圧だけに原因があるのではない。
日本列島の南に迫る梅雨前線という低気圧が、
移動した水分をさらに吸引したのであろう。
雲の移動は、天気予報の衛星のアニメーションでわかるが、
<湿度>変化までは見えない。

地球温暖化による温度変化は、
緩慢に表れるので統計からしか判断できないが、
<湿度>の著しい変化のパターンは、直接感じることができる。

65億人の人体の約60〜70%は、地球表面に分布した水分なので、
森以上に奪われる存在である。
私の水分のように、せいぜい森と共に移動するしかない。  Y.K

やまぼうし

天気のいい日は、たいてい森の近くの、といっても裏庭の
大きなやまぼうしの木陰で野草茶を飲みながら
玄米おにぎりを食べる。 すると、
「僕はずっとここに来てから あの山脈の頂上に登りたいと思っている。でも明日にしよう」
とまた思ってしまうだろう。
夕方には、仕事は止めて、春ゼミや河鹿が鳴く河川敷の自然温泉で
身も心もせせらぎに調和させようか。
そういう生活が、千年後にもあるとは思えない。
有史以来海岸部にある都市だけで地球人口は増加している。
そういう生活も千年後にもあるとは思えない。
私の裏庭でも、いままで世界と矛盾する出来事は起こらなかったからだ。
ただ、すこし遅れてやってくるだけだ。       Y.K
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新しい家族

私の家には猫がいる。
うう、うに、じょじょ
の3匹だ。
みんな捨て猫だった。
傷ついた野ウサギの子が2日ほど家にいたが、
すぐに死んでしまった。

この増え続ける家族が
畑で遊んでいる時に、いつもの2羽のカラスが
彼らを襲うときの鳴き声で
誰かは遠くからでも分かる。

彼らの役目は、カラスも含めて
新しい家族の発展に参加することだ。

先日もキセキレイを自慢げに口に加えて帰ってきたばかりだ。
この災難にあった鳥こそは、天気のいい午前中など、
庭先の至近距離で年老いた家族をわざわざ
からかっていた鳥である。  
彼らほど、野生を学んでいるペットはいないだろう。
私だってこのごろは、散歩で集めた薪を誰よりも早く着火させ、
いつまでも焚火ができる。            Y.K

カボチャ

天気の良い日の、夕暮れには、
私は焚き火をはじめたくなる。
焚き火でする、ダッチオーブンのカボチャの丸焼きは
最高のデザートである。
特にカボチャの皮でさえ甘くなる。
これを発見したときの喜びは忘れられない。
焚き火が止められない理由だ。

ただし50個食べなくては
最高のカボチャには出会わない。

これが、焚き火をしない時の理由である。 
人を見る目よりも、カボチャを見る目のほうがはるかに難しい。
今の私は、「あいつはカボチャだ」などど、たやすく言えないのである。  Y.K

電磁誘導

千キロのドライブから帰ると、背戸の桜は散っていた。

春風がいっせいに新緑を誘い出し、
鳥たちもテリトリーを忘れて水浴びをしている。

緑の葉の香りが漂う満月の夜は、
めずらしく焚火を消そう。

それを合図に、森の獣たちも一緒に吠えはじめる。
夜風が吹くたびに、熾火が星々のように揺らぐ。

理由もない喜びに満たされる
この電磁誘導に逆らうことなど、
誰もできないだろう。

そして、この季節を虚ろにしか記憶できないのは
なんという疑い深い存在のなか。    Y.K