二重の客体化


科学技術は、客体化のための手段とそのプロセスから形成されるが、
服従矯正の手段としても機能する。

冷蔵庫は、第1次世界大戦では、海上での兵站線に不可欠な軍事技術であったが、
第2次世界大戦後に普及した家電となった。

そして、第3次世界大戦(中東戦争)では、
スマートデバイスでのゲームアプリが
兵士の殺戮の恐怖感から逃避する心理アプリとなった。

21世紀のインターネットは、無料の高速通信手段であるが
平時の市民の服従強制のための監視手段として機能する。


対比的な<図>と<地>による二重の客体化では
同時にそれらを認識できない。


われわれの脳は、こうした非同時的な二重の客体化には不慣れである。
生活水準を向上させるテクノロジーは
<人を騙す>テクノロジーに変換され、
脳科学は<脳を騙す>テクノロジーに転用されている。


服従矯正のテクノロジーは、<互いに隔離された見えない群れ>を形成できる。

哺乳瓶(baby bottle)

哺乳瓶という授乳する道具の発明は、労働形態の変化と人口爆発を加速した。

哺乳瓶の発明は、蒸気機関に始まる19世紀の産業革命と同時期であり、
世界同時多発的に生まれた。
哺乳瓶は、素材技術の革命から生まれたのではなく、
女性の工場労働力の確保の必要から生まれたのである。

その発明は人間を含む哺乳類の子に対して使用できるほど汎用性があるが
当時の哺乳瓶の開発主体は、つねに男性だった可能性がある。

続)貧困と欠乏

つまり、バイオスフィアには、エネルギーの欠乏や過剰は存在しないのである。
欠乏と過剰の経済学が存在するだけである。
あるいは、奪うか奪われるかというゲームを合法化した
デフォルトへの矯正装置にすぎない。

1968年まで、ノーベル賞から経済学が排除されていた理由である。
ノーベル経済学賞は、グランチのスウェーデン国立銀行が設立した賞であり、
ノーベル財団はノーベル経済学賞を認知して来なかった。

貧困と欠乏

貧困と欠乏に、相互関係があるように
富裕と過剰にも、上記の相互関係が
反対称的に機能する。

失業率を廃絶する資本主義は存在しない。

不労所得が十分にあって働く意志または
その必要がない自発的失業人口が増加すると同時に
技術革新によって賃金抑制装置としての相対的過剰人口も増加するからだ。

貧困と欠乏、そして富裕と過剰の相互作用は、自然には存在しない。
分解と結合の同時的かつ非同時的に重なり合う階層構造だけである。

二極的思考

善と悪のイデオロギー闘争に引きずられる二極的思考は、
無秩序を組織するためのエントロピー思考である。

その思考方法は、生命現象ともっとも効果的に対立できるからだ。

私は、「成長する正20面体」(サイエンティク・アメリカン日本版 1990年9月号)の
シナジェティクス論文で、5回対称性に潜む多中心的で非周期的だが
統合的な秩序の階層構造を発見し証明した。

Growing Icosahedra Yasushi Kajikawa
(この論文とモデルは、1990年からシナジェティクスの編集者アップル・ホワイト氏に
よって管理され、現在スタンフォード大学のバックミンスター・フラーのアーカイブで管理されている。)

二極的思考は、数千年の時間によって矯正されたプログラムである。

核保有への前提

人間が互いに敵対するようになり、
さらにどのようにしてイデオロギーを教育するかを知る前に
人間が生まれた時に、
すでにイデオロギー的世界観を自由に選べなくさせられ、
無条件で受け入れざるを得ないことこそ
核の保有に不可欠な前提なのである。

敵の殲滅という固有の世界観を含むかぎり
つねに排他的であり、
競争と矯正によって独占的な実利を最優先する合法的行為さえも
イデオロギー的である。

自由に住む手段と場所の選択肢

鯨が海水という環境との相互作用を楽しむように、
人類には大気圏と水圏、そして大気圏外での相互作用を楽しむための
道具をデザインする能力がある。

21世紀の個人には、
船と飛行機、そして自動車で移動できる手段の選択肢があるが、
自由に住む動く住居の手段(=モバイルシェルター)と
その場所の選択肢はもっとも遅れている。

大気圏内での相互作用が、もっとも経済的で安全だったにも関わらず
大気圏外を移動する宇宙船には、動くインフラが備わっている。

まだほとんどの富める個人も、都市のインフラにぶら下がっている。

より働かない自由

建売り住宅と分譲マンションをより効率的に販売するために
賃貸をより少なく、より高い賃貸にする戦略によって、
豊かさを求める人々を土地不動産と株に繋ぎ止めながら、
土地資本主義は、自ら不動産を手際よく処理した歴史以上に、
世界中を自由に移動する企業の戦略的で
独占的な能力を加速度的に増強してきた歴史は
ほとんど知られていない。

豊かさを求める欲望は、ますます<金利>に繋ぎ止められ
遂に、より働かない自由は、富豪だけの特権だと思わされている。

自由(=Freedom)の実践方法

シナジェティクスが、自然の原理の発見によって、
その独自な探究方法を確立しながら
デザインサイエンスの環境の変革によってもたらされる
自由(=Freedom)の実践方法でないとしたら、
自己規律を伴う自己テクノロジーは
宇宙に内包されなかっただろう。

エネルギーと水、食料とシェルターの科学的な生産技術は、
自己テクノロジーを媒介する。

人為的なリバティ(liberty)とは異なった
自由(=Freedom)の実践方法は、つねに宇宙的で包括的だ。