浮遊する構造

構造物の基礎部分が大地に依存するかぎり
そして、大地にその構造物のすべての自重を流し続けるかぎり
すべての構造は、マントルに浮かぶ大地につねに浮遊しているのである。

不動産を支える疑似構造学が
注文住宅のオリジナルデザインによって
建築ビジネスに埋没している間に、

外洋の荒波や乱気流でも
破壊されないで快適に浮遊する空間構造は
すでに開発済みだ。

船舶や航空機以外で大気圏内を浮遊し移動する空間構造は
テンセグリティによって
もっとも現実化したのである。

すべての浮遊し移動する構造は、
もっとも安全である。

構造はその定義と共に崩壊した

解体すべきは、十八世紀以来、構造の幾つかの本質の定義に使われてきた
特性、アプリオリな固体的概念、安全性、経済性、耐久性などの総体である。

構造の定義の重要さは、想定した範囲内では崩壊しないと断言してきたことよりは、
むしろ構造の定義は、構造の発見によって
つまり、シナジェティクスによって、たやすく覆されたことである。

構造の定義は、構造の発見の後にやって来たのである。
つまり構造は、シナジェティクスより前には存在していなかったのだ。

徐々にではなく、つねに急激に

宇宙の原理の発見によって
産業の次に経済が、経済後の政治によって、
それまでの人々の生活水準に関する種々の制限を
徐々にではなく、つねに急激に突破してきた科学産業史を
政治は無視していることで政治は成立する。

人権や自由は、
エネルギーや食糧と同様に、工業化の諸段階において
徐々に制限されるべきだなどとは
企業にも政府、そしてメディアにも言えないのだ。

アジア的デザインサイエンス

雨水から、そして生活雑水やトイレの複合タンクから完全に
飲料水を再生し、永遠に循環させるた独自な自律的インフラを設備する
非・資本主義的なモバイル・シェルターは、
西欧文化の圏外にしか生まれないにちがいない。

アジア的デザインサイエンスは
あまりにも資本主義に特有な権力構造によるインフラ課金形態を
越えなければならない。

アジア的デザインサイエンスにクライアントは不要だ。
宇宙の原理群の純粋なユーザとなることによって
最小限の大気圏内モバイル用の宇宙船を建造できる。

アジア的デザインサイエンスは
エネルギー生産だけではなく
稲作を中心とした食糧生産のテクノロジーと
水の完全再生テクノロジーとを統合するであろう。

動くシェルターは、つねに動くバイオスフィアと相互作用する。

クリティカル・パスの形成

デザインサイエンスは
可能な解決を退けるような
専門分化した解決方法や批判を破壊するのではなく
プロトタイプによって
それらを陳腐化する実践行為とそれを支える理論化過程を含む。

その過程で
はじめてモデル言語を理解することができる。
その言語形成の能力が
講義や読書などの学習形態から習得されることはないだろう。

アンチ・リダンダンシー

建築ビジネスに於いて
構造設計家は安全率を高くするために
構造計算の結果よりも
数倍の無駄な補強を構造に与える保守的な態度によって
自らリダンダンシーの奴隷になっているかもしれない。

安全率が大きい場合、予測の不確実性が大きいので
リダンダンシーという概念を用意したとも言える。

より高く長距離で飛行するための
より大きな鳥の翼は
余剰の多さを受容する方法を排除して
歩行にはまったく不向きになっている。

航空機の構造デザインでも
予測の不確実性のために
素材の重量増加に依存する習慣は排除されてきた。

必要最低限のものに加えて余分や重複を許容する態度や
そのような余剰の多さを受容する方法は
有機体生物の場合は確実に絶滅の要素となっている。

その絶滅の要素こそが
リダンダンシーによって利益率を高くする方法であり
ほとんど詐欺師のノウハウである。

<構造>という言葉の背後

この複雑に破壊されていく構造を、単純に分析することは困難であるが
それなしでは人間も権力構造も生きることができない。

<構造>そのものではなく
<構造>という言葉の背後に隠れているものを
一つ残らず解放しなくてはならない。

その場合、政治や経済だけではなく、
構造とパターンに関する科学、すなわち数学が関与するはずである。

岩石のように

自然のエネルギーが、未曾有で未知であり
そして自在である現象に対して
岩石のように、固定的に固体的に
人間の住居を構造をデザインすることは
もはや非科学的である。

すべての岩石は、移動した結果である。

不動と見立てた岩石や大黒柱から
科学的な安全率と安全性は形成できない。

専門分化したエンドユーザ

ほとんどの建築家は
建築コードと構造解析プログラムの
単なるエンドユーザである。

彼らはそれらを変化させることはない範囲の
安全率(safety factor)で建築ビジネスを運用する。

もし、そうでないなかったなら
この現在の仮設住宅に関する前世紀の法律を
前世紀までにすっかり陳腐化できていただろう。

ジャンボジェットの翼は
ナイアガラの滝の上から
機体を自由落下させてもその翼は機体から
もぎ取られないように構造全体が設計されている。

さもなければ、上空一万メートルで発生する
エアータービランス(乱気流)の中を安全に飛行できないのだ。
エアータービランスの衝撃はマグニチュード8をはるかに超える。

安全率を意図的に高くできることは
危険性を予測する不確実性が高い事実を隠蔽できると共に、
自分たちの責任回避の手段に利用することができる。

安全率の高さは必ずしも安全性の高さではないことは
大災害ですでに証明されてきた。

すべての構造に関する専門家は、
法律上の安全率が提供するマージン (margin) に依存した
エンドユーザであってはならない。

エネルギーが通過した断層面

一度断層となった境界面は
強度が低下するため繰り返し地震を引き起こす。

別の地下に存在する震源断層のほとんどは
地表から観察できない。

断層は、明らかに自然のエネルギーが通過した
臨界面的な軌跡である。

しかし、エネルギーが通過した断層面だけが
地震の軌跡ではない。

自然のエネルギーは
バイオスフィア内部の3次元空間を
臨界面的な軌跡を生成する以上に
自在に移動している。