月別アーカイブ: 2013年5月

レイマン(layman)

当時シルクスクリーンの印刷工だった私は
休日にテンセグリティモデルと
ベクトル平衡体モデルを制作しても
シナジェティクスを理解できなかった。
そもそも英語が読めなかったせいにしていたが
その魅力は脳裏から去らなかった。
————完璧な3Dでインプリントされたのだ。
40年前に遭遇したこの出来事は
バックミンスター・フラーに会う十分な動機であった。
最初の論文のスパーバイザーは
バックミンスター・フラーであったが
彼は英会話の素晴らしい最初の教師だった。
私が最初に書いた論文は、最初に印刷された数学論文となった。
私が完璧な<レイマン(layman)>からスタートした事実は
論文を書くよりも重要だった。
これほどまでに単純で個人的な関係を選択できたのは
バックミンスター・フラーが完璧な<レイマン>を理解する
真に知的な教育者であったからだ。
現在の知的産業社会が教育に期待するのは
私のようなレイマンではなく、超専門家たちである。
彼らが教育カリキュラムや株価、
そして、原子炉を設計している。

メタフィジックスモデル

飛行機のプラモデルを組立しても
航空力学が理解できないように
ベクトル平衡体モデルや
テンセグリティモデルを制作しても
シナジェティクスを理解できない。
完全な理解を求めれば、
すぐに失業するようにデザインされている
希有なメタフィジックスモデルである。
何かがあると感じても行動することは稀である。
知識は増えるほど行動しないように人間を教育できる。
みんな専門家になりたがっているから。

振動について

光合成生物が
光エネルギーを使って
水と空気中の二酸化炭素から炭水化物を合成しているように、
テンセグリティは
風や雪や雨といった外部からのエネルギーを
張力によって<より分散してより統合する>非有機的生命である。
<分割して統治する方法>は
外部からシステムを変容または破壊する方法であるが
<より分散してより統合する方法>は
システムを通過する外部エネルギーが
そのシステムをより統合する方法である。
共鳴現象は無生物の統合過程にも現れる。

新たなジオデシック構造

21世紀のジオデシックドームの製作者たちが
新たなジオデシック構造とそのパターンに関する原理を
発見することがないのは
その機能だけを信じているからである。
実用性の信奉者が実用性を生み出すことはないだろう。
ウイルスでさえ自己複製だけを行っているわけではない。
生き残るための新たな構造とパターンを
発見する方法を知っている。

複製と翻訳

道を覚えられない人が
赤い車を目印にするように
シナジェティクス原理を独自に発見できない人は
シナジェティクス・オブジェをより美的に複製している。
美的な指標にするために。
美しいオブジェを指標することは
シナジェティクスモデルを翻訳するよりも
簡単なことだ。
シナジェティクスモデルには
無数の未知な言語が潜んでいるがゆえに
翻訳に成功したモデル言語よりも
シナジェティクス・オブジェの方が複製されやすい。
シナジェティクスモデルの複製と
シナジェティクスモデル言語の転写・翻訳は、
互いに異なった行為である。
前者は形態と機能の複製が優先されるが
後者では概念の解読または原理の発見、
そしてその翻訳が優先される。
そして後者が新たな前者を生成するのである。

アンチ・レバレッジ

外部や内部からの力に対して
変形しない物体は宇宙には存在しない。
剛体は理想化された仮想的な物質である。
剛体力学は、数千年間も梃子(lever)という
棒状の剛体の実用性に囚われてきた。
経済でさえ、他人資本を使うことで、
自己資本に対する利益率を高めるレバレッジに夢中である。
rigid body dynamicsから
レバレッジなきtensegrity dynamicsへ
この張力の包括的な原理と実践方法については
まだ誰も科学的に教育できていない。

より細く、より強い方法について

球の表面積に対して
より小さく分割して頂点数を増加して強度と剛性を
シナジー的に増大させる方法が
ジオデシックの振動数=分割数(frequency)の原理である。
より細い繊維状の炭素繊維が
最強の張力材を形成する場合は
同じ直径の張力材では
張力材の表面積が増大するほど
張力がシナジー的に増大する原理を利用している。
すべての張力が物質の表面に現れ
ついに張力をその表面から離脱させるテクノロジーこそ
ジオデシック・テンセグリティだ。

非共鳴テンセグリティ

しかし、もう一つの工学的な原因については
ほとんど理解されていない。
張力がゴム紐や釣糸などの不適切な弾性によって
2点間距離がつねに変動して
その振動数をほとんど吸収している。
張力材には弾性率の高い物質が望ましい。
(註:弾性率の高い物質ほど変形しにくい)
自動車ならかなり危険な
サスペンションシステムになるだろう。
フィジカルな原因からも
テンセグリティの非共鳴状態が
生成される。

共鳴について

テンセグリティに
振動していない瞬間は存在しない。
テンセグリティは
つねに環境と共鳴している。
その振動とその音に気がつき難いのは
われわれの感覚器の限界を超えた振動数だからではなく
感覚器自体がつねに自己のざわめきで
振動しているからである。