という鋳型

他人とは違った人間になることに基づいて
もっと知的になり、もっと明晰で尊敬されるために
思考が他人と異なるように努力する。
これこそが絶えず知的産業社会が
個人に求める個性へのアプローチなのである。
そのアプローチの見返りに
個性に見合った深い安心感を期待しているのである。
しかし、アプローチは対象とするものに接近する方法である。
動機のないまま他人とは違った人間になる方法に没頭すればするほど
言葉や規範、願望によって
がんじがらめにされているのである。
個性は社会が作り出す見えない鋳型なのだ。
生成される中身はどれも驚くほど同型である。
思考方法を壊す思考はその方法からは生まれない。
Think different はすぐれたキャッチコピーであったが
命令形は何の違いも生まないのである。