砂のデルタ都市

この大規模災害で人生が変わるのは運命とは言えない。
広島はいまでも砂のデルタ都市だ。
太田川はこのデルタ都市を形成した大河である。
広島の八木地区はかつて太田川の堤防沿いに拡がる
美しい梅林で、徒歩での春の遠足を思い出す
沢や谷を宅地に偽装して
住宅を買わされた人たちは
古い土地資本主義の未来の犠牲者だった。
観測史上記録的な豪雨といった誇張した気象現象に原因を求めるよりも
無謀で悪質な都市計画と土木事業を批判する古典的な地理学が不在なのだ。
この災害が地球温暖化説で説明されるのはもっとも虚しい。
自然気象を偽装できるほど、人間は自然を知らないまま
砂上都市はつねに流動する<浮かぶ都市>なのである。
実際、広島の地下鉄のインフラが整備できたのは20世紀後半になってからであり
しかも本通 – 県庁前間の0.3kmしか建造できなかったのである。