動力学的住居

17世紀にミケランジェロに加えてレオナルド・ダ・ビンチが設計に参加した 
バチカン市国の世界最大級のサン・ピエトロ大聖堂によって
無柱の球状空間(直径49m)が、絶えず威信を持つようになり、
その後の宗教的建築のモデルとなった。

世界最大級のための初期の構想案は、完全な半球ドームであったが、
最終的に静止力学的な解法と実験から尖頭型ドームが採用された。

システムの各要素の相対的な位置が時間的に変化しない状態で作用する
力やトルクについて研究する静止力学的は、
大地の静止状態を前提とした構造物のみを対象にしてきた。

その歴史的保守性を超えたのは、1949年のバックミンスター・フラーによる
オクテットトラスを構造モジュールとした
動力学的なジオデシックドーム構造(直径51m)である。
真のジオデシックドーム構造は、大地に根ざした基礎部を必要としない。

それによって、形態学や超専門化した施工技術を基盤とした建築学ではなく、
数学を基盤とする超軽量な構造学がはじめて明らかにされた。
同時に、世界最大級の宗教が独占してきた無柱空間は、
ジオデシックドーム構造による単位あたりの物質・エネルギー・時間コストで
圧倒的に陳腐化したのである。

大地の動的状態と共存可能な人間の住居のモデルは、
巨大宗教を支えた静止力学的な建築学を基盤とするのではなく、
数学を基盤とする経済的なモバイル用超軽量テクノロジーに移行したのである。

この超軽量テクノロジーは、
惑星地球上のあらゆる局所的気象条件下でテスト済みである。