月別アーカイブ: 2017年3月

デフォルト化するシェルター

人々が求めた住居は、
自分と家族のために<獲得された空間>であり、
絶えず自分と家族と共にある空間ではなかった。

私がデザインするシェルターは、
宇宙と共に機能する環境制御装置である。

水と食料、そしてエネルギーを自律的に生産し制御するための
シェルターを生産する人々にこそ、
最初にこの都市に依存したすべてをデフォルト化するシェルターが必要だ。

21世紀は、すでに難民の時代だ。

フラーレンとナノチューブ、そして細胞とシェルター

もし、テンセグリティが発見されていなかったとすれば、
フラーレンとナノチューブ、そして細胞とシェルターは、
それぞれが特殊な形態として存在していたに違いない。

さらに、自然とその概念をささえる思考が
どのように形成されたのだろうか。

テンセグリティが発見されるまでの世界の科学哲学史に貢献する
圧縮材が不連続な構造を統合する連続する張力材にまで
抽象化された思考を共有する科学的・数学的・哲学的コロニーは、
孤立し遊離しながらもバックミンスター・フラーが練り上げた独自のコロニー以外に
いっさい存在していない事実を除外したならば、
フラーレンとナノチューブ、そして細胞とシェルターを、それぞれ
もっとも少ない物質と時間、そしてエネルギーで形成する同一の構造原理への理解は
他の惑星で展開されていたただろう。

予測的デザインサイエンス

構造とパターンは、
相互的に直接作用しながら変容する織物である。

面、線、点の相互作用から
閉じた新たな構造のパターンが発見される。

しかし、純粋な構造のパターンの目録には
ストラットやジョイントや皮膜のコストの情報は含まれない。

デザイン行為は、異なった原理間の調整のみならず、
それらすべての要素間の相互作用を調整する段階に存在する。

その認識は、予測的デザインサイエンスに属する。

その単独者へ向かう私の自己のテクノロジーの修行は、
バックミンスター・フラーに会った29歳から始まったが、
幸運にもその物質化の最終段階がついに訪れた。

短命な閃き

独創的なアイデアの源泉を
閃きに依存する人々の幻想は驚くほど平凡でありながら、
傲慢さを巧妙に隠蔽したオリジナリティに身を包む。

一瞬であろうと、徐々にであろうと
オリジナルなアイデアが閃くと言うことはありえない。

それはどこかで見た誰かのアイデアにちがいない。
瞬間的に思い浮かぶ他者のアイデアを模倣する人々に
共通する幻想は短命だ。

風が吹かなかった場所は存在しないが
風は、異なった場所で
同時に同じ方向から吹かないトポロジーにしたがって
独創的なアイデアは、ついに発見されるのだ。

発見は、短命な閃きとは無縁である。
発見は、計画的偶然が織りなす主体的な産物だ。

独創的なアイデアは、人間には属さない輝きをもたらす。
それは、自然の原理に触れた瞬間の電磁誘導なのだ。

媒介者(vehicle)

企業にとってノウハウは、富の構成要素の一つである。
難民を受け入れる国家は、
確実な富の源は人口にあると考えている。

企業にも、国家にも、
人間は宇宙と大地とを繋ぐ本質的な媒介者
または伝達システム(vehicle)である
という観点はどこにもない。

確実で無尽蔵な富という概念によって
人々は目的のない牢獄に繋ぎ止められている。

先験的システム

権力システムに対抗する政治哲学論よりも
エネルギーと食料、水とシェルターを無料化するテクノロジーのほうが
それらを互いに断絶させ分裂させる権力システムと
反対称的な先験的システムなのである。

先験的システムは、つねに包括的である。
ーーーー例えば断面積ゼロの重力、つまり張力的存在。

自然の構造

構成要素とは、
どのような要素を使って構造が組み立てられるかを
検証した結果である。

検証なき構成要素からは
どんな構造も主体的な思考の対象から逃れてしまう。

主体的な思考から発見される自然の構造は
つねに先験的である。

有用性(utility)とメタフィジックス

シナジェティクス領域から
デザインサイエンス領域に移行する過程で
理論的段階から実践的段階へと質的に転位するだけに終わらない。

実践的段階が理論的段階へと押し戻すほどの
工学的技法を超えた数学的な原理の発見に遭遇したならば。

異なる2つの段階を通過し、往復することで
異質な原理から成り立つビジョンへ移行できているかどうかが
生存するための<有用性(utility)>に到達できる
信頼すべき兆しなのである。

テンセグリティ・シェルターの生産過程で遭遇する
シナジェティクス原理の発見は、
最大のプリセッション(計画的偶然性)である。

シェルターが完成すれば、
その内部で私は再びシナジェティクス論文を書くだろう。

自律していくコロニー

流動する圧倒的な難民を受け入れない情況を先導する場合
その国家の民主主義はすでに消失しかけている。

自国の領土を買ったり売ったりしている間に、
その領域内にいるかぎり、
安全で平和に生きられることを保証するという国家は
もはや存在しないのだ。

エネルギーと水と、食料
そしてシェルターを過不足なく自給し、
自律していくだけで
人類は短期間にコロニーを形成できるのだ。
——-火星に行かなくとも。

権力がもっとも怖れているのは
人類の自発的な集団化(コロニー)なのである。

極地へ向かう工兵隊(military engineer)

自然と出会うために
人間が道具を使用して短期間に居住可能な場を形成するという考えで
アウトドア製品はデザインされてきたと思われてきた。
しかし、軍隊が来るべき資源戦争に備えて
予備的に行う極地的調査方法から
派生した道具類の洗練された段階に過ぎなかったのである。

アウトドア製品は、
それらをデザインする人々から
自然についての知とコスモグラフィー的認識が消失し、
予期せぬ死の危険を帯びた自然探検への
疑似体験やそれを追体験するための道具にとって変わった。

戦時なら、つまり、21世紀の難民大移動の時代なら
モバイルテンセグリティシェルターの開発は
工兵隊(military engineer/pioneer)の最優先課題の一つであるだろう。
軍隊から主体的に離脱する彼らは、
バイオスフィアのエネルギーと食料生産の可能性が眠る極地へと向かうだろう。

(工兵隊という包括的パイオニアを代表する活動は
ペンタゴンの計画と建設、および原子爆弾のマンハッタン計画などであり、
これまで<見えない権力構造>の技術部門を代表していた。)