シナジェティクス」カテゴリーアーカイブ

常温・常圧

蜘蛛の糸と同じ直径からなる繊維を、
鉄と炭素からそれぞれ構成した場合、
もっとも引張力の小さな繊維は、
蜘蛛が紡ぎ出す繊維ではなく鉄の繊維である。
炭素繊維は鉄の10倍である。
蜘蛛が自発的に撚った繊維は鉄の5倍となる。
この引張強度のもっとも高い炭素繊維(カーボンファイバー)を
機体の大部分に利用する軽量の旅客機に使用するには、
炭素を繊維状に成形してから炭素の含有量を高くするために、
特別な装置で300℃の高温・高圧状態にしなければならない。
常温・常圧でハイテク繊維工場を内部化(=内蔵化)した蜘蛛は、
引張力の再現において、もっとも省エネであり、
しかも二酸化炭素の排出量は、最小限であるばかりか、
化石燃料にいっさい依存していない。
蜘蛛から見れば、
常温・常圧でさえバイオスフィアが
準備してくれた偉大な空気膜のテクノロジーである。

シナジェティクス・モジュール理論

小さいなことの積み重ねで予想外のことが起きるのは、
世界が有限な最小限のモジュールで形成可能だからだ。
小さなこととは、例えば、原子核を構成する核子である。
ただし、積み重ねる方法は物質ではない。
すべての核子はこれまで、球状粒子というアナロジーに支えられてきたが、
エネルギーに形態は存在しないという科学的な刷り込みによって、
だれもその形態を見た人はいなかったのである。
シナジェティクス・モジュールは、
バックミンスター・フラーの量子モジュールの発見から
現存するメタフィジックスを樹立してきた。
もはや科学的アナロジーを超えたのである。
類似に基づいて適用する認知過程はリアリティにとっては二次的である。
☆参照文献
「成長する正20面体」梶川泰司 1990 
日経サイエンス(サイエンティフィックアメリカン日本版)
『コズモグラフィー(シナジェティクス原論)』
(バックミンスター・フラー著 白揚社 2007)

短命化(エフェメラリゼーション)

平均寿命が延びて人口が加速度的に増加しても、
約3万日間に出会える人間は
3万人にはならないだろう。
たとえ、図書館の隣に住んだとしても、
3万冊の読書は不可能だ。
一生を健康的に長寿で生き抜くことができたなら、
賢者といわれるだろう。
包括的な芸術家のように、
理論と実践が統合されなければ、
とうてい達成できることではないだろう。
しかし、もっとも短命なのは、
芸術家・科学者(アーティスト・サイエンティスト)と革命家である。
彼らの選択的な短命化なくして
人類の長寿化は実現できなかっただろう。

自発的

「この仕事は絶対に負けない」という得意分野には、
特有な幻想が潜んでいる。
だれでも一度は「一を識って十を知る」ことに接近するために、
もっとも効果的な専門分化に憧れる。
しかし、自発的な方法の絶えざる探査で、
専門分化されることは不可能である。
「一を識って十を知る」専門分化のプロセスに
無関心になる経験と発見を積めば、
真の包括主義者の「一を識って十を観る」ことに
接近できるかもしれない。
つまり、知的環境の整備さえも
自発的にデザインできたなら、
それはもっとも包括的な方法のひとつだ。

ベルヌーイの定理

自然は扇風機のように

羽を使わないでも風を興せる。
風が吹くのは、
海水があって、

陸には植物が水分を保存しているからだ。

そして、太陽系を地球が公転しているからだ。

さらに台風やハリケーンは、

地球の自転(コリオリ力)を利用して回転し始める。

強い風は軸回転力から生まれる。
ダイソンの羽根のない扇風機(Air Multiplier)には、

風を興す内部に回転するある種のローターが内蔵され

リングのスリットから吹き出すことで、

リング状の表面に気圧差を生じさせている。

流速が上がれば圧力が下がるベルヌーイの定理にしたがって。
この気圧差が粘性の高い気体の流速にシナジー効果を与えている。

しかも、異なった空気の流れには
温度差(冷却)が生じているはずだ。

離陸直後のジェット機の主翼のように・・・
羽根のない扇風機は、矛盾した言葉である。
扇という言葉自体に羽が内蔵されているから。
扇風機は、純粋な <風の加速器>になったのである。
より少ない風でより多くの風を興せる
台風やハリケーンのメカニズムに接近したのである。
風はつねに軸回転によるプリセッションから生まれ、
ついに大気圏がバイオスフィアを制御するように、
空気は空気自体を制御できる。
お金のないアメリカは、

膨大なドルを印刷して世界中に
経済格差を生じさせても

世界を回転させ続けることはできなかった。
民主主義で偽装された経済原理には、

支点の消失によるレバレッジという圧縮材の機能の不全から
一挙に拡がる破綻の原理しか機能しないだろう。

変速ギアボックス

私が高校生の時、
変速ギア付きのドロップハンドルの自転車はまだ高価だった。
さらに、追加のパーツから15段変速の自転車に改造した時、
羨ましがる友人たちからF1と命名された。
しかし、ギアの合金の強度が不十分だったので、
変速時にチェーンからかかる衝撃によって
ギアの歯が変形し折れることがたびたびあった。
後輪のむき出しの歯を見れば、
使用する各ギアの頻度がすぐにわかる。
もっとも使用するギアは最小半径のトップギアであった。
思い描く速度に対応する十分な脚力があれば、
加速するには、3速で十分であった。
だれもが、15段変速のギアの大半は使っていない。
時速300キロで安全に走行可能なF1のギアは、僅か7速である。
ギア比からエンジンの回転数と出力(特にトルク)が想像できる。
(ちなみに、速度よりもトルクがより重要な大型トラクターでは
前進32速である。)
F1のセミオートマチック連続ギアボックスだけのコストは、
2000万円程度である。
高温にも耐えられるカーボンファイバー製のクラッチは200万円程度らしい。
より早く走行するための変速器の性能は
つねにより優れた合金にこそ期待できる。

動的平衡

有機体生命以外で、
もっとも単純な動的平衡状態を観察したければ、
テンセグリティモデルが一つあれば十分だ。
しかし、
圧縮力と張力という互いに非鏡像的で反対称的な流れは、
テンセグリティモデルの振動以上に観測することができない。
互いに非連続な圧縮材と連続した張力材と物理的な動的平衡は
シナジーの概念によってのみ説明できるだろう。
テンセグリティ構造の概念のアナロジーは、
テンセグリティの発見以前には存在しなかった。
実際、1911年ラザフォードは原子核を発見したが、
テンセグリティ構造の発見者ではなかった。
トムソンによる電子の発見(1897)から陽子・中性子の発見まで
原子核構造の概念形成に14年間の懐胎期間があるように、
原子核を発見から球状テンセグリティ構造の発見まで、
38年間の懐胎期間が存在する。
さらに、細胞がテンセグリティ構造であると認識されるまでには
球状テンセグリティ構造の発見から約半世紀を必要としている。
原子核構造と同じように、
球状テンセグリティ構造と細胞テンセグリティ構造は
電子顕微鏡という人間の視覚の拡張装置ではなく
概念によって、視覚化されてきたのである。

シナジェティクス・クッキング

すべてのクッキングは複雑な生化学反応を伴ったある種の操作主義だ。
シナジェティクス・クッキングは習得可能だ。
しかし、発見されたシナジェティクス・モデルは、
つねに美的な存在であるが、
美術館向きではないばかりか、
発見者の知的または美的センスにも依存しないだろう。