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シナジーに関する誤謬

シナジーは、これまで相乗効果(synergy)と翻訳され、
ある要素が他の要素と合わさる事によって
単体で得られる以上の結果を上げる時に
使用されてきた。
しかし、相乗効果を期待して、全体の最適化、効率化を
発揮させるような計画を作ること自体が
すでに間違っている。

なぜなら、単体で得られる以上の結果を考えること自体が
予測不可能である科学的事態をまったく除外しているからだ。
計画的に予測的に合成された合金など科学史には存在しない。

シナジーに関する社会的経済的な無知は
前世紀と変わらない。

シナジーに関するこの誤謬は
シナジェティクスにまで及んでいるが
シナジーは、自然と未知(unknown)をも支配する現実を
その探求者が知る時はやがて訪れる。

シナジーは実在の過程に潜むからだ。

何かを人間のために作る前に
知るべき段階としてそれはデザインされている。

利益から、あるいは競争から、
善意から、そして支配や破壊から
何かを作る人々から遠ざかるために。

反建築的思考

現在の人間の生命を保護する建築の構造とパターンは
基本的にはキュービックであり
人間主体の伝統的な行動様式で生きている
そして場合に応じて、このキュービックな構造とパターンは
根本的に地震に対して安全だと言う工学的な側についたり
構造の安全率は建築コードによって決定されている
と言う権力的な側についたりした結果生まれるようなプロセスでは
不十分だということを
私はバックミンスター・フラーから学んだ。

なぜなら、自然の構造とパターンは
未知のシナジーによって支えられていて
しかも、それらを統合している存在が
それらの構造とパターンを作り出しているからである。

自然はその構造とパターンを無償で生成する方法において
だれの許可も得ない。

つまり、バックミンスター・フラーは
構造の破壊と革命において
<建築家>であったことは一度もなかったのである。
実際、かれは建築家のライセンスを一生持たなかった。

ライト兄弟は、人類初の飛行実験において
誰の許可も得なかったゆえに、揚力の存在を証明できたのである。

航空力学は、彼らの実験には有用ではなかったと同時に
航空力学がその実験の後に形成された事実を
現在の教育プログラムから除外してきた理由は
ジオデシック構造の構造解析方法も
複数のジオデシックドームの建造の後の
破棄実験から形成されている事実を説明するだろう。

人々は無数の許可の元で、種々の自由や構造さえも定義している。

デザインサイエンス

労働力が最も不足している点在し集中する都市に
難民と潜在的難民を分配することは
権力テクノロジーの役割である。

つねに工業と農業に新しい技術発明と発見をもたらし
生産物の不足(または過剰)と品質を改善するための
生産性のテクノロジーこそが
難民の安価な労働力に依存しない科学的な方法である。

難民を人為的に作り出すコングロマリットから
全人口を生産の循環の中に位置づける方法を予測的に計画したのは
バックミンスター・フラーの1970年から開始された
デザインサイエンスだけである。

いまも信頼できるその戦略構想と実践方法は
『クリティカル・パス 宇宙船地球号のデザインサイエンス革命』
バックミンスター・フラー著 梶川泰司 訳 白揚社 2007
に要約されている。

最小限の装置=trimtab

人間の生存をかけた闘い理由にしてなされる
最大の正義(Justice)は、戦争である。
生き残る必要性を公平な名目として
殺し合うようにわれわれは訓練されている。

デザインサイエンス革命は、
人類の生存のために
わずかな力で巨大な全体を動かす最小限の<装置=trimtab>のデザインと制作
から生まれる。

デザインナーたちは、
最小限の装置=trimtabとは何かを考える仕事を
自分たちの仕事から最初に除外してしまった。
裕福な人や企業が生き残るために。

動くシェルター

気取ったデザインや
表面的デザイン、あるいは
懲りすぎたデザインが
どれもシェルターには適さないのは
死を想定したサバイバルの手段だからだ。

水と食料とエネルギー、
そしてシェルターから人類の移動による人口増加が始まった。

死を予測的に遠ざけるデザインは
だれでも瞬時に見分けることができる。

船、自動車、飛行機、
そして動くシェルターのデザイナーは
つねに建築家ではない。

反建築コード

建築コードとしての構造理論は、
法的な主体による法律上の概念に基づいているが
自然における構造の統合性の分析は
自己の自己へのテクノロジーによって形成された
主体の倫理に基づかなければならない。

テンセグリティがまだ建築コード化されていないのは
バックミンスター・フラーの
自己テクノロジーから生まれただけではなく
テンセグリティ以上に自然に属している純粋な構造は
発見されなかったからである。

シナジーが、人間にとってつねに未知(unknown)を含んだ
構造を形成しているかぎり
人為的な記号テクノロジーは時代遅れである。

発見された構造

船舶と航空機は
浮力や揚力に変換する力学の発見によって
重力を利用してきたが
建築はつねに重力と闘ってきた。

テンセグリティ構造のみが
重力を張力と見なして
圧縮力に変換する力学を発見したのである。

つまり、それまで原理的な真の構造は発見されていなかったのである。

そして、その発見から半世紀以上経過した現在も
その作用と機能はまだ十分に解析されていないが
デザインサイエンスの任務はそれらの証明問題にはない。

航空力学が誕生する前に
飛行機は、大地から離陸したように。

可逆的モデリング

シナジェティクスが解釈の過剰性から逃れているのは
解釈する側がシナジェティクスとデザインサイエンスとの
相互の相補性から捉えられないからではなく
シナジェティクスモデリングによる
圧倒的なモデル言語学が実践的に理解できなかったからである。

解釈の過剰性から逃れた
<構造と意味>の統合したモデリングは
<構造>と<意味>は相互に可逆的である。

シナジェティクス考古学

バックミンスター・フラーのクロノファイルから
実際に確認できることが
本当に存在したものとして認識されることは容易ではない。

長いテクストを伴う『シナジェティクス』でさえ
モデリングからしか解読できない場合がある。

60トンもある彼のクロノファイルに分け入って、
シナジェティクスについてモデリングのまま保存された
新しい<構造と意味>を解読する作業は
考古学に近い。

それは、フラーが亡くなった当時、西海岸に移転したフラー研究所での
シナジェティクス研究のための
その<思考の幾何学>における概念的な探査を
私が3ヶ月で中断した理由でもある。

それは、シナジェティクス的解決方法への問題意識がない時の
クロノファイルの探査をすべて排除したときである。

経験を通した理解は、つねに同時的でかつ非同時的であるからだ。