カナダ製のバイオトイレを購入した。
便座の形をした成形部分の底に、
ヒーターと攪拌機が付いただけのデザインだ。
落葉広葉樹の枯葉が調達できれば、
お金のかかる特殊な微生物は不要だ。
森に生息する豊富な微生物の働きに比べれば、
都市の下水施設は、
もっともエネルギーとお金のかかるテクノロジーである。
(排泄物を大量の水で溶かす習慣は、人間だけだ。)
動物にとって、森はメンテナンスフリーの巨大なバイオトイレである。
都市のビル群の屋上は、
サツマイモなどの菜園だけではなく、森にすべきである。
森は緑とは限らない。
「裏庭(背戸)」カテゴリーアーカイブ
ミツバチ
場所ごとにいろんな香りで満たされる
春の気配に魅入っていると、
突然、アトリエに日本ミツバチが帰ってきた。
空が曇って見えるほどの仲間を連れて、
別の場所から、また巣別れしてきたのだろう。
球状の空間のなかを飛び回る時は、
遠くの低い山から聞こえるエンジン・カッターの音を思わせる。
やがて、アトリエに続くの別の建物の壁と基礎との隙間の入り口に、
黒い固まりとなって、しばらくアメーバーのような謎のダンスをしていた。
受粉のために働く勤勉なミツバチはいない。
すばらしい季節を求めて移動したいだけだ。
その夜が、満月だと分かったとき、
久々に外で焚き火をしながら、お酒を飲んだ。
霜
早朝はストーブを全開にしている。
畑のまだ小さな雑草一面は、霜で覆われている。
空気と接触している物体の表面が冷やされることで、
空気中の水蒸気が氷の結晶になるには、
地表よりも水分を蓄えた雑草の若葉のほうが選ばれる。
晴れた夜の地表は主に赤外線を放射するので、地表は冷却される。
この放射冷却は、冷蔵庫の冷凍室のような
直接的な熱伝導による冷却効率の約3倍になる。
冷気は下降するが、
霜は、雨や雪のようには「降らない」。
霜は、大気圏外に向かって、大地が外向きにエネルギーを
放射することによって生じる。
霜を「しも=下」とイメージするかぎり、
「上・下」の概念で思考する世間から脱することができない。
風
いま風が吹くのは、
風の吹かない場所が、
この瞬間に
地球上に2カ所あるからである。
偏西風
一晩中、窓ガラスに木々の小片が飛んでくるほどの
偏西風の嵐だった。
裏庭から絶えず聞こえる鳥たちのざわめき。
庭の鳥たちは、山脈の起伏に沿って風向きが激しく変わる
まだやわらかな新緑がない樹木の暗闇のなかを、
小刻みに動き回っていた。
動けば動くほど翼は小枝に衝突し、
きれいだった羽先は痛々しく傷つくだろう。
しかし、飛行機のように失速して墜落する鳥は存在しない。
彼らは飛んでいるときが一番安全だ。
早朝の電話で、都会のアトリエの庭先の椿の花は
この嵐でも落下しなかったことがわかった。
椿の花は、嵐ではなく、晴れた夕方に落下するように
温度差と湿度でデザインされているはずだ。
鳥は、環境の変化に対応した結果、
歩行や静止には弱くなることを選択し、
常緑広葉樹は、乾燥や温度変化には弱くなることを選択した。
人間は、うぬぼれから経済的政治的な変化に適応するだけで、
まだ環境の変化に対応していない。
岬
岬には沢があった。
沢は豊かな森に囲まれていた。
岬から延びる水平線を溶かす太陽に照射される前に
静かな入り江を見下ろしながら、
瞑想できる時間がある。
水平線は観察者がつくり出す無数の瞬間だ。
太陽はすべての瞬間を焼き尽くす。
現在の出来事は
過去からの反作用であり、
未来への結果である。
現在は、
絶えず書き換えられる過去と
掛けかけられる未来に
作用している。
太陽が入り江をもっと複雑にするための
波を絶やさないように。
誕生日
小豆入り玄米を焚きながら、
暗くなる前に炭火を熾して、小魚を3匹ゆっくり焼く。
夕方庭を歩いただけなのに、
まだ草の香りが窓から流れてくる。
月夜の夜はせせらぎと蛙の声を聞いていよう。
池のそばで一斉に産卵する。
少し大きな字で一年に一回縦書きの手紙を書いている。
明日は母の誕生日だ。
母は僕を見ると
自分の父親の目の色が僕とそっくりなのを
想い出す。
やがて、月夜の明かりと間違えた
蛙が別々の窓から部屋に入ってくる。
ジョジョも春の晩は眠れない。
花見
山桜はやっと散ってしまった。
葉が出そろう前に花が咲くから
桜を開花から春が始まる貴重なシンボルとしてきた。
しかし、メタボリック的に見れば、
開花を支えるエネルギーは前年の秋までの光合成に依存している。
葉が出そろった後に花が咲くまでの過程に
低温な季節が介在しているだけである。
春の始まりを象徴させる桜の開花時期の社会的基準は
競技場の円形トラックでもっとも遅れて走るランナーを
先頭のランナーだと勘違いする
周期的なタイムラグから発生している。
自然のエネルギー会計収支には、
人間の経済活動の会計収支とは
異なった様々な周期的パターンがある。
この惑星のメタボリックデザインでは、
花見はいつでもどこでもできるのだ。
ミュート・コミュニケーション
沸かし湯ではない
奥出雲の静かな岩風呂の温泉に入るときは、
2,3人もいない客とかるい挨拶をする。
このとき、返事が返ってこない時は
間違いなく都会人だと思ってよい。
都会人の子どもは挨拶すること自体に驚いている様子である。
この一様な反応に年齢はあまり関係していない。
折角の休日を田舎で一時的に滞在する人は、
無意識的にコミュニケーションを
絶縁状態にしている可能性はあるにしても、
都会でジョギングですれ違う人が
軽く挨拶することもないからただの都会の習慣かもしれないが、
同じ天然のお湯の中でしばしの時を過ごすには
不自然な習慣である。
過密な通勤電車から身を守る
ミュート・コミュニケーションは天然温泉でも解除できないのか。Y.K
純粋培養
甘酒は麹から簡単に作れる。
最近の温度計付きのシャトルシェフは省エネの発酵装置となる。
お粥に含まれるデンプン、タンパク質、脂肪などを
麹カビが分泌した酵素によって
短時間に低分子化した結果、
甘酒にはすべての必須アミノ酸、そして大量のブドウ糖、
ビタミンB1 、ビタミンB2、ビタミンB6、
パントテン酸(善玉コレステロールを増やす働きがある)
などが含まれることになる。
玄米から作る場合は、玄米の繊維が多少残るが、
噛んで飲む甘酒は実に美味しい(無農薬玄米の場合だけである)。
これらの成分は、驚くほどの即効性あるので
飲む医療点滴に等しい。
もうじき、麹の季節は終わろうとしている。
そろそろ麹自体を純粋培養する装置を作らなければならない。
麹は甘酒作りのなかでもっとも高価な道具だからだ。 Y.K
