裏庭(背戸)」カテゴリーアーカイブ

限界集落

田舎の生活?何百万人もの人々がいるのに、完全な分断状態。
大地と大気は繋がっているにもかかわらず。

家族はみんな淀んだ都会に出かけてしまった。
しかも、農薬による汚染は止むことがない。
田舎も都会も限界集落の規模の問題だ。 Y.K

カオスポイント

朝一番、森のそばを散歩するとき、
思い切りオナラをしてみよう。
鳥が羽ばたき小動物がざわめくのがわかる。
川のせせらぎを超えて向こう岸から反射音が聞こえるだろう。
まもなく400m先のバス停の老人がこちらを振り向く。

次に、たとえば新宿西口の信号待ちでで立ち止まったとき、
同じようにオナラをしてみよう。
だれにも聞こえないし、驚くことに臭わないことに気づくだろう。

都市空間は感覚器のカオスポイントを超えて
淀んでいるのだ。
それゆえにどんなに淀んでいるかはもはや測定できないのだ。 Y.K

裏庭のエデンドーム

9年前、東京の実家の裏庭に制作した
緊急災害用の直径6.5mの超軽量ジオデシックドームを
グーグルマップで再確認してみた。
それは無対称な都市では真珠のように異質な光をまだ反射していた。

テフゼルを外面に、遮光の白色フィルムを内面に使用した
最初の2層のエデンドームの防水性と耐久性は
高温多湿の日本でも完全に証明された。

このことは友人のJ・ボールドウィンに伝えた。
(JBは『バックミンスター・フラーの世界』(梶川泰司訳 美術出版社 2004)
の著者であり、個人用の超軽量ジオデシックドームの歴史的な先駆者である。
イギリスのエデンドームは JBの第2世代ジオデシックドームであるエデンドームの
コンセプトから触発されている。

第3世代ジオデシックドームである高床式のオクテット・トラスの床を備えた、
本体総重量75キロテンセグリティ・ドームは、最近私の倉庫まで
分解移送されたが、懐胎期間を終えたわけではない。        Y.K

保障期限

日本酒を飲みながら
古代のバイオエタノールに対応した私の身体は
秋の天の川に魅入る。
焚き火の輝きで流れ星は数えられない。
ここには夜が残っている。

人間はつねに二酸化炭素を排出する。
この気楽なデザインの保障期限はあとわずかである。 Y.K

自然発酵

稲刈り前に台風による大雨がふると
稲の品種によっては、倒れた穂が地面に接してしまう。

そして条件が揃えば、稲は発芽したり、
自然酵母が付着して、発酵してお酒の臭いが漂う
田んぼになることがある。

その稲を食べた人が
アルコールを効果的に造ることを思いついたにちがいない。
お酒という概念が、最初の発見者によって発明されたかは
それほど重要でない。

同じ理由で、どぶろくは自然発酵によって簡単にできる。
6月の気候と温度は、放置するだけの自然どぶろくには最適である。
稲にはもともと乳酸菌と酵母が含まれる。
この乳酸菌の生成する乳酸が雑菌の発生を抑え、
麹の分解酵素により生成される糖を酵母菌が分解し
アルコールが生成されることは
自然の相互作用(プリセッション)である。      Y.K

中毒患者

オンラインゲームによるインターネット中毒患者が
急増し、次々と急死している韓国のニュースを見た。

低速インターネットしかない
日本の田舎(農水省では中山間地と定義する平野部ではない傾斜地)では
インターネット中毒患者はあり得ないことだ。

この猛暑と残暑のなかでも、
景観事業と称して抜け目なく配給される補助金のために、
草刈機の2気筒エンジンの排気ガスと共に
発生する騒音と振動の虜になった
草刈り中毒患者のニュースが
海外に配信されるのは時間の問題だ。

稲の原種はアジアやオセアニアに自生していた雑草である。
元は熱帯原産であるから、
雑草の栽培(粘土団子)に稲の野生種を混ぜれば、
地表温度を低下させるもっとも効果的で
経済的な地球温暖化への防御システムとして
採用されるだろう。

砂漠化の科学的な防御方法にかかるコストを思えば、
雑草を繁殖させるコストが不要なのは幸運なことに違いない。
雑草を敵に回した石油系の末路は、減反であるが
雑草こそ増産すべきである。

都市と農村が一様に亜熱帯化して砂漠になろうとしているときに、
日本の里山の原風景が失われるなどどいったセンチメンタルな文化的議論は
小さな話である。
世界の植生からみれば、
雑草は日本列島が誇る希少性の高いバイオマスである。   Y.K

代理人

鮎が群れをなして川底の苔を食べていた。
鱗は絶えず光っていた。
秋の川は一番澄んでいる。
収穫前の稲に農薬は控えられるからだ。
だれでも無駄にお金を使わない。

稲は本来的に水を浄化するが、農業は河川を汚染する。
きっと鮎だけではなく、稲でさえ収穫されるまで
農業と戦っていたに違いない。

自然農米を食べたことがない農民でも稲作ができるように
自己教育の経験がない教師(=代理人)が教育をするから
子どもは学校で直観的にシステムと戦っている。   Y.K

キセワタ

台風の最中のちょっとした晴れ間に
裏庭で焚き火をした。
天の川のように煙が流れ、
河鹿のように夜鳥が鳴いている。

明日はきっと新しい友人が
キセワタを見に来るだろう。

裏庭の絶滅危惧種は、
この夏いつもよりも凛として咲いていた。     Y.K

裏庭

都会のマンションの一室で
ペットが死んで数ヶ月間放置されると
厚い壁で隔たった隣人でさえ
ドアの隙間や換気口から漏れてくる異臭を感じるだろう。

私のアトリエのすぐ後ろに
そびえる1200m級の山脈に連なる裏山に棲む
熊や鳥やイノシシ、うさぎや狸、そして昆虫たちと
その他のすべてのいきものの数と体積は、
人間よりも大きい。
彼らは森の中で生まれ、自然死してきたが、
森の散策で異臭を感じたことはない。
森はいきるものたちの香りで満たされている。

都市全体は、
地表と地殻に潜む名前のない無数の昆虫や微生物たちを
短期間に死滅させて、
1千万人分の生活臭や腐敗臭が漂う
裏庭のない閉じた惑星として販売されている。

一瞬たりとも消臭剤や滅菌剤,
そして除草剤なくして、
この小さな惑星は管理できないのである。 Y.K