分子間の結合のように

剛性と強度を偽装した構造を暴き出すには、
面のない構造フレームだけでは不十分だ。
フレームの各頂点で、剛性の高い結合材によって
相互にフレームを結合している限り。

自然の構造には、
離れた距離で初めて働く電磁気学的な力が存在する。
分子間の結合には、
構造物のような結合材が介在しないように分子間力が働く。

テンセグリティ構造には、剛性や強度のある結合材はいっさい存在しない。
張力材は、圧縮材に圧縮力を生じさせるための張力ネットワークである。
テンセグリティ構造はもっとも軽量で経済的である。
そして安全である。

Plastic

プラスティックは、廃棄物質として嫌悪され、
自然志向派からはしばしば憎悪されてきた。
ナイロン・ビニロン・合成ゴムなどは、
合成高分子のプラスティックであり、
炭素を含むたんぱく質・核酸・多糖類などは
生体高分子のプラスティックである。

眼鏡レンズは割れない安全なプラスティックであるが
人間の爪や体毛、そして眼球もプラスティックである。
遺伝子情報によって成型されるプラスティックという
有機高分子物質から生成されている。

プラスティックは、つねに造形的な存在様式であり
ナイロンが合成される前から存在している概念である。

生命はプラスティックを憎悪しない。

電磁誘導のような

春の嵐が、黄砂を運ぶ青空に変貌するように、
経験は、それまでの知識を破壊するほどの予期しない新たな関係を生む。
経験がそれまでの理解を破壊し再生する過程は
同時的に他者とはけっして共有できないという経験こそが想像力をかきたてる。
知識と知識との新たなどんな関係も、
電磁誘導のような非接触の想像力なしでは他者とは共有できない。

自然のデザイン

問題意識は、問題解決の方法に含まれる。
作る方法は、作りたい要求の後に生まれる。

作る方法は原理の存在に関係するが、
作りたい要求から自然のデザインは発見されない。

原理を作った人間はいないという場所から
自然のデザインが見えてくる。

春の嵐

止むことがない外力と衝突する前に、
外力を受容し、
非同時的に外力分散するシステムは、
けっして劣化しない。

過剰な外部エネルギーから過ぎ去るために内部は
外部エネルギーによって全方向に秩序化されるのである。
システムは、より組織するために部分を絶えず再生する。

テンセグリティシェルターは
瞬間風速30メートルの春の嵐を待ち伏せる。

設計図とプロトタイプ

概念的な思考は系統的であるが、つねに部分的で不完全である。
しばしば偏愛的な段階と細部を含む。
設計図とプロトタイプとの違いは圧倒的である。
真の機能は図面化できないほど互いに重なり合っている。

統合的な思考はプロトタイプにある。
原理はプロトタイプと共振する。

住宅の壁は、構造の一部である。
外敵からの攻撃やプライバシーの保護のために
その壁は、つねに不透明である。

建築構造では、
この防御壁は不可欠な構成要素であるが、
壁は、無知と恐れが物質化したのである。

植物の茂みが内部空間を分割するシェルターに防御壁は不要だ。
シェルターを覆うフィルムは、
内部と外部の境界面、そしてテンセグリティの張力面としてのみ機能する。

予測的人類学

単一な植物を大量に栽培するには、
肥沃な大地に群れとして接近する大型の単一の動物の家畜化が前提だったという人類学は
農業化と酪農化の専門分化を支持してきた。

単一の植物の栽培化と動物の家畜化のための社会構造化から
遊離できる自然農に接近するには、
もっとも経済的で耐久性の高い全天候性のセルフビルドのシェルターが前提となる。
高温と寒冷、そして放射物質から防御するセルフビルドの農業用シェルターも含まれる。

その結果、最小限の田んぼと畑、そして水の再生と
電気エネルギーの自律的な生産が十分に確保できるのである。
これは予測的デザインサイエンスである。