雪は一立方メートルあたり三百−五百キロもの重さがある。アメリカの南極基地のジオデシックドームはハリケーン以上の破壊エネルギーを持つブリザードや圧倒的な積雪に30年以上も無傷で耐えてきた。この構造は、屋根の機能を壁と分離する必要のない全方向的な外力分散の機能を備えている。降雪時に蓄積しておいた太陽熱とか水で雪を溶かすような特別な融雪装置付き屋根をデザインしなくても、ジオデシックドームはもっとも安全で経済的なシェルターである。通常の建物において毎年の除雪にかかる全エネルギーコストと耐久性、安全性を計算すれば、ジオデシックドームの優位な経済性および安全性は科学的に証明できる。 Y.K
アーティスト・サイエンティスト
われわれは、永遠性よりも日々変動するレートや株価、さらには瞬時に決められるオークションの方を信頼している。法則よりも人為的な偶然性を帯びた人生ゲームに興じることを優位においている。株式会社の平均寿命は25年以下であるにも関わらず、科学的普遍性をつまりは永遠性を容認しない傾向がある。その結果、科学者は総人口の0.1%以下のままである。不幸にも、人類に影響を与える発明家の数はさらに少ない。産業史で描かれる技術革命に実際に関わったのは、こうしたアーティスト・サイエンティスト達である。 Y.K
職業と仕事
利害を超越した独創的な仕事は、芸術や科学だけにあたえられているのではない。
しかし、生産的な活動と生活費を稼ぐこととを同一視しているのは、こどもの将来に愛情を傾ける両親や教師である。
職業と仕事を区別しない思考の条件反射が、義務教育課程で自動的に再生産されやすいのは、職業を決めてから受験科目を決定する思考なき習慣が、彼らが運営するPTA(Parent‐Teacher Association)によって維持されているからではないだろうか。
ライト兄弟は(おそらく最初の宇宙飛行士も)、職業を決めてから受験科目を決定しなかった人たちである。
なぜならそういう専門職は当時の社会に存在していなかった。
利害を超越した独創的な仕事は、しばしば生活費を稼ぐための大多数の職業の起源を説明する。 Y.K
デザイン・プロセス
惑星地球の基本アーキテクチャは、マクロ構造をミクロ構造から造るデザイン・プロセスである。見えない構造から見える建造物へ変換するプロセスである。
太陽系アーキテクチャのプロセスにも、重力という見えない非物質的な張力によって、テンセグリティ構造が介在する。 Y.K
エフェメラリゼーション
エフェメラリゼーションは、物質とエネルギーに深く介在している超物質的な
アンチ・リダンダンシーである。 Y.K
リダンダンシー
テンセグリティ構造は原子核構造モデルから銀河系モデルを通底する普遍性を備えている。振動しない構造システムは銀河系では存続できないので、テンセグリティ構造は外力を振動によって、システム内で分散し、限界を超えた分散に対しては、部分的な破壊で衝撃を吸収してシステムの補償作用でバックアップする。テンセグリティ構造においては、リダンダンシー、すなわち想定される最低限の負荷と要求される最低限の性能に対し、それより多め、大きめに設計されたこれまでの「余裕」や「余地」は、反転する。
より大きくデザインする場合、テンセグリティ構造の構成要素はより細く、軽くデザインされる。原子核構造にリダンダンシーが極小化される理由に、より接近する。
テンセグリティ構造では、リダンダンシーはついに非物質化されようとしている。 Y.K
〈免震構造〉と〈耐震構造〉を超えて
〈免震構造〉とは建物の基礎部分に特殊なゴム層などを入れて地盤と絶縁し、地震の震動が地盤から建物に伝わるのを防ぐ仕組みであり、建物を丈夫にする耐震構造とは発想が異なる。〈免震構造〉は非固体的なメカニズムであるが、〈耐震構造〉はより固体的なメカニズムである。
大陸は、時計の長針のように目に見えない速度で常に移動している以上、非固体的なメカニズムでさえ大地と絶縁することは不可能である。
大地からの自律度という概念が、〈免震構造〉にも〈耐震構造〉にも欠けている。
大地からの自律度がもっとも高く安定した構造システムは、テンセグリティ構造である。 Y.K
構造システム
人間が物質と確認するものは、すべて構造システムである。
すべての構造は原子から成る。
その原子は、モノでない。
純粋な原理で発生するエネルギー事象である。
したがって、すべての構造は常にダイナミックで決して静的でない。
言い換えれば、すべての構造は、特例な場合の複合体による密接なシナジェティックな相互作用の結果である。
デザインとは、すべての構成要素が思慮深く秩序づけられるように構成する行為を意味する。すべての構造システムはデザインされたエネルギー事象のパターンを備えている。 Y.K
無柱、無線、無管、無軌道
宇宙船などの宇宙空間に滞在するための環境制御デザインから見れば、建物の「内臓機能」はすべて固体的で非効率的である。大気圏外での生存は、有線、有管、有道から、可能な限り無柱、無線、無管、無軌道に変換されている。大気圏内でもっとも経済的で安全なテクノロジーの度合いも有柱、有線、有管、有道からの離脱度で図られる。
宇宙におけるバイオスフィアはもっとも優れた宇宙船のデザインの宝庫である。 Y.K
最後の産業革命1
エネルギーの自給自足なき住居は支配であり、手っ取り早い現金収奪装置である。
耐震装置や免震装置があろうがなかろうが、災害非常時にエネルギーと食糧が部分的にも調達できない住居は、すべて生存困難な単なる空間となる(災害の後にたとえ被害を受けない住居として残っても、大地に根ざした町全体のインフラ機能がすべて廃棄されると無価値になる場合がある)。
エネルギー生産装置付住宅による自給自足は、住宅に組み込まれた一種の「生産装置」であり、それによって住民は、経済の悪化によりエネルギー収入がたたれようとも、「とりあえずは生きていくことができる」。それは汎地球的な再生的エコロジーの原点でもある。
これは60年前に、バックミンスター・フラーがダイマクシオンハウスのプロトタイプに、現在の航空機産業でも自動車産業でも到達していない機能をインストールしなけれならなかった理由である。 Y.K
