月別アーカイブ: 2015年6月

明晰さ

重力とその未知なる秩序が実在し
人間が作り出す構造には
張力的存在のはかなさしか存在しなかった
半世紀前のそれほど遠くない時代を
テンセグリティモデルを再現する人々は
もはや記憶に留めてさえいないのだ。
いまや、テンセグリティの張力という
その明晰さではなく
張力による未知なる統合力によって。

昨日のテンセグリティワークショップの参加者へ

テンセグリティモデルは縮小した形態モデルではない。
テンセグリティモデルで起こることは
メタフィジックスの現実(リアリティ)にちがいない。
シナジーを具現化したこのモデルは
未知をあらゆる瞬間に再生している。
未知は自然に含まれ、シナジーは自然を包む。
シナジェティクスのモデル言語は
そのシンタックスとセマンティックスに挑んでいる。
それは夕日に輝く山の端よりも近くて明晰だ。
2015年6月29日 
シナジェティクス研究所
梶川泰司

モデルを陳腐化するメタフィジックス

すでに存在するモデルを陳腐化する挑戦は
新たなモデルを制作することのように見える。
実際は、そのモデルを制作する過程で
不可視の原理を発見する行為なのである。
ベルヌーイの定理が
翼の揚力のデザインに適用されたのは
飛行機が発明されてからである。

抵抗する構造システム

自己の自己への関係においてしか
シナジェティクスモデルは発見されないだろう。
自己と環境
宇宙と自己との相互作用を再構成することは
おそらく根本的な課題であり、
デザインサイエンスにも不可欠な緊急課題である。
そして、
自己の自己への関係においてしか
政治的権力に対する永続的な抵抗方法も存在しないだろう。

黎明期モデル

シナジェティクスモデルの再現では、
外面的な形態とそれを構成する素材の選択などに
エネルギーが注がれる。
内面的なメタフィジックスモデルの表現として
エネルギーがほとんど使われない場合は、
その表現とは無縁な数学モデルだと考えているからだ。
シナジェティクスモデルは
原理を再現する過程の観察者によって
観察者の内面を外部化する希有な手段である。
私のスタジオには
30年以上も前に制作したモデル群が
今なお、宇宙を外部化するために待機している。
シナジェティクスモデルには
それぞれの外部化のための黎明期がある。
黎明期に入ったモデルは、つねに単純で野性的である。
それは、観察者の思考言語を変革するモデルの特徴である。
古びたモデルは、突然新しく輝く始める。

プリセッション(precession)

プリセッションは
シナジェティクスの主要な概念用語の一つであり
また最も翻訳しにくい概念の一つである。
天文学の歳差運動が
プリセッションのもっとも分かりやすい
物理的現象を表しているわけではない。
現象に対して先行[優先]する存在を対象化しないかぎり
専門用語がさらに分岐していくばかりだ。

The last straw breaks the camel’s back.

最後の藁一本がラクダの背骨を砕く時、
背骨という圧縮材の限界ではなく
粘膜と筋肉による張力と
背骨という圧縮力との
統合力が限界に達したときなのだ。
つまり、振動の停止が突然やってくると
圧縮材は座屈(buckling)を生じる。
テンセグリティの固有の振動は、
不安定な状態や圧縮材の座屈を回避するための機能である。

張力の役割

張力の役割は、張力による振動以外に
その現象に抗して見かけのはかない形態を打ち立てると共に、
見かけの形態に振動によるシステムの自律とその意味を与えることにある。
張力は、張力による統合という動的な秩序のもとで
はかなさと振動を相互に打ち消す力を持っているのだ。

階層的モデル

発見されたシナジェティクスモデルは
新たなモデル言語を内包している。
そのモデル言語は
熟考によってはじめて発見され、
そのシナジェティクスモデルは
モデル言語によってはじめて発見される。
ひとつのシナジェティクスモデルは
じつに階層的である。

熟考する(consider)

あるがままのシナジェティクスモデルを見ることは
いつも簡単ではない。
新しい関係は、重さではなく、形態(form)でもないから
新しい言語がなければ、見えない関係が存在する。
自分で発見したシナジェティクスモデルでさえ
あるがままではないのだ。
あるがままに接近できるのは
唯一、モデル言語による熟考(consider)である。