動的なアイデアについて

現在の特許文献の形式は
最初に従来技術との比較から始まる。
発明の根源が比較から生まれ
ロイヤリティへの幻想が発明のエネルギーである場合
その発明は恐ろしく近視眼的で短命になる可能性がある。
この短命さが半歩先のビジネスに不利にはなるとは限らないからだ。
短命な発明にとって
もっとも手っ取り早い現実化(=realization)とは
現金化(=realization)と等価である。
一方、包括的なアイデアは
発明者が置かれた現実の諸問題に
発明者自身が全的に直面して生きること
他者の概念や過去の幻影、文献などの記憶を通さずに
全的に現実の矛盾に触れることから生まれている。
発明とは人々の生活を改善するために
革新的で現実的なアイデアを
物質的に変換する
いわばエンドレスな無償の行為に近い。
優れた発明には先見性がある。
その特許権の有効な期間内に
成就できないほどの包括性と不可分な先見性は
無償の行為に接近するだろう。
過去の歴史の中でついに現実化しなかった発明が
しばしば、直観や思考を費やさければ到達できない
動的な展開力をもった先見性に満ちている場合は
芸術作品と同じように
優れた発明も<物質はつねに遅れてやってくる>という
表現行為として受け止めることができる。