日別アーカイブ: 2013年10月6日

続)自然のリダンダンシー

ケネス・スネルソンが球状テンセグリティを作品に利用できなかったのは
バックミンスター・フラーの先行するシナジェティクスと
テンセグリティ原理の発見に干渉するだけではなく
人間の生活空間への利用の可能性を否定することで
新しい芸術様式を成立させたかったからにちがいない。
(同時に、スネルソンはバックミンスター・フラーが最初に概念形成した
tensegrityという造語の最初のユーザであったことに
注目しなければならない。)
科学的解釈が達しない芸術の拠り所をテンセグリティに求めた瞬間に
彼はテンセグリティの科学的な構造原理を
自ら排除しなければならないジレンマに陥ったのである。
それゆえに、彼が思い描いた新しい芸術様式が
20世紀の後半に隕石の内部から発見された
フラーレーンにも複製されていた事実は決定的であった。
テンセグリティ構造においては、人間は発明することも
表現作品のオリジナリティを作り出すことも不可能であった。
付加的でない自然のリダンダンシーを否定する人々は
宇宙の現実をあるがままに受け入れる科学的な試練に対して
絶えず原理の発見へと導いているこのメタフィジックスを知らない。